2型糖尿病では骨密度が高くとも骨折リスクが高く、骨質低下により骨折リスクが増加している。骨の構造的要素は骨質を構成する要素だが、骨折リスクとの関連は解明されていない。 臨床CT画像を活用し、2型糖尿病患者よりも骨強度が保たれている非糖尿病者の材質特性を与えた有限要素法で骨強度指標シミュレーションを行った。この計算手法は、非糖尿病患者において、骨密度よりも感度・特異度が優れた強度判定手法であることが確立した計測法である。しかし2型糖尿病患者において、本手法で得た椎体強度指標を椎体骨折の有無間で比較したところ、有意差を認めなかった。この結果は、構造劣化を代償する材質強度を与えて強度シミュレーションしたことを意味しており、間接的に2型糖尿病患者の骨材質特性は、非糖尿病者よりも脆弱であることが明らかとなった。 臨床CT画像から椎体海綿骨の骨微細構造指標を計測する計測手順を確立した。2型糖尿病患者の海綿骨微細構造は、椎体骨折者で有意に骨梁数(Tb.N)が有意に少なく、骨梁間隙(Tb.Sp)が有意に広く、骨梁連結性が低下していた。従って、2型糖尿病患者の骨脆弱性の亢進機序において、構造的骨質低下がに関与していることを明らかにした。 本研究により、2型糖尿病患者の骨脆弱性は、材質的ならびに構造的骨質劣化が関与していることを、臨床CTを活用した強度シミュレーションおよび微細構造解析で明らかにした。 臨床CTで得た新規海綿骨構造指標と有限要素法による強度解析は、骨密度で骨脆弱性の評価が困難な2型糖尿病の続発性骨粗鬆症において、構造的骨質低下を介する骨脆弱性を を評価する、新規で有用な骨粗鬆症診断法となる可能性が示唆された。
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