本研究はADモデル動物を用いて神経変性時および治療介入時の脳内酸化ストレスの動態を新規画像技術である“in vivo EPRイメージング法”で解析し、その結果を免疫組織学的手法などによりAD様病理変化およびミクログリアを中心とした神経免疫システムの動態と比較検証してADの病態解明を試み、新規治療法を考案するための根拠となる基礎的データを提供することを目的として開始した。 ADモデル動物として家族性アルツハイマー病の変異型APP遺伝子および変異型プレセニン1遺伝子を導入したAD-Tg マウス(APPswe/PS1dE9:APdE9マウス)を用い、(A)ガランタミンを投与しないコントロール群、(B)Aβが沈着し始める生後6ヶ月からガランタミンを投与した群、(C)脳の病理的変化がほとんど認められない生後3ヶ月という早期からガランタミンを投与した群の3群に無作為に割り振って、各群いずれも生後9ヶ月目に認知行動評価としてnovel objective recognition test(NOR)を行った。 結果は、NORにおいて「(B)生後6-9ヵ月投与群」および「(C)生後3-9ヵ月投与群」で共に「(A)ガランタミン非投与群」と比較して新規物質の探索時間割合が増大するという形で認知機能の改善を認めた。また、画像解析ソフトウェアImage Jを用いた脳組織学的評価においては抗Aβ抗体(6E10)によるAβ染色解析で皮質に占めるAβの面積の割合が「(B)生後6-9ヵ月投与群」群および「(C)生後3-9ヵ月投与群」で共に「(A)ガランタミン非投与群」と比較して減少していた。
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