慢性偽性腸閉塞(CIPO)は重篤かつ時に死に至る難治性疾患である。我々世界で初めて明確な診断基準を提唱し、さらにシネMRIという新たな診断モダリティを確立、その成果が評価され、本疾患は近年新規「難病」に認定されることとなったが、一方で本疾患の治療は未だ確立されていない。減圧治療が有用であることはこれまでの既存の報告から確実ではあるが、従来の方法(経鼻イレウス管)では咽頭痛などの患者苦痛が強く、また入院管理を必要とするものである。本研究では、患者苦痛が少なく在宅治療が可能な経皮経胃ろう的空腸瘻チューブ(PEG-Jチューブ)減圧療法に着目し、これを「新規治療法」として確立することを目標とする。平成28年度は、PEG-Jチューブの有用性の前向き検証を行った。 計7例に対してPEG-J前後での栄養状態(BMIやアルブミン値)、腹部症状を有する日数、小腸内体積を前向きに検証し、治療の有用性、および有害事象の有無を評価した。結果としてBMIやアルブミン値などの栄養状態は有意に改善し、腹部症状を有する日数も有意に減少した。一方で小腸内体積は減少傾向はあるものの、明らかな有意差は得られなかった。化学性皮膚炎や逆流性食道炎が見られたが、いずれも保存的に改善しうる軽度なものであった。主観的にも客観的にも改善することが示された。このため在宅で可能な新規減圧治療法として確立しうるものと考えられた。 これらの結果は第71回日本大腸肛門病学会学術集会、13回日本消化管学会総会学術集会 で主題発表し、良好な評価を得た。
|