研究課題/領域番号 |
15K19294
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小松 孝行 順天堂大学, 医学部, 助教 (70621928)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食事摂取量 / 悪寒戦慄 / 菌血症診断予測 / アルゴリズム |
研究実績の概要 |
今回の多施設前向き観察研究(UMIN ID:R000013768)では、食事摂取量と寒気の程度の組み合わせによる菌血症を予測する簡便なアルゴリズムの作成を目的とした。 対象は2013年4月から2014年8月までにおいて血液培養を施行した3施設における入院患者計2793名(平均:68.9±17.1歳)のうち消化管疾患や抗癌剤使用によって食欲不振があるもの、あるいは明らかな汚染菌が検出された症例を除いた1945名である。血液培養施行前の食事摂取量(摂取良好群:80%以上摂取可、摂取不良群:80%未満)と悪寒戦慄の有無に加え、体温・脈拍・収縮期血圧・呼吸数・白血球数・C-reactive protein値を評価した。食事摂取量と悪寒戦慄各々で菌血症予測における感度・特異度・陽性尤度比・陰性尤度比を算出し、さらに再帰分割分析によって両評価項目を用いた菌血症予測アルゴリズムを作成した。なお、食事摂取量は本邦においては看護業務の一環として測定しているが、評価者間信頼性を検討するため予めκ係数を算出し、3施設それぞれκ=0.83 (95%信頼区間:0.63-0.88), 0.90 (95%信頼区間:0.80- 0.99), 0.80 (95%信頼区間:0.67-0.99)と高い一致性を認めた。 1945名のうち319名が菌血症であり、食事摂取量が良好の場合は感度92.8%(95%信頼区間:89.2-96.5)、陰性尤度比0.21で菌血症を除外した。一方、悪寒戦慄を認めれば特異度95.1% (95%信頼区間: 91.7-98.4%)、陽性尤度比4.83で真の菌血症を予測した。なお食事摂取良好で悪寒戦慄を認めた菌血症は2例、食事摂取良好で悪寒戦慄を認めない菌血症は14例であった。 食事摂取量と悪寒戦慄を組み合わせたアルゴリズムを用いることで、簡便に菌血症の有無を予測することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、本研究結果を日本内科学会総会および米国感染症学会でポスター発表を行った。現在論文投稿中でありAnnals of Internal Medicineは査読に進んだものの一人の査読者からは好印象を頂いたが、もう一人の査読者からはrejectの扱いとなり、最終的なeditorの判断でrejectに至った。現在American journal of Medicineへ投稿準備中である。 本年度は、当初本研究で作成した診断予測アルゴリズムを用いた血液培養検査施行基準の妥当性を多施設共同研究により評価するため、本研究の論文受理を待ってからの試験開始を予定していた。しかし最終目標である東京消防庁の救急受診ガイドへの導入のためには、血液培養検査の施行の是非という命題よりも、血液培養検査を要する菌血症の有無を本研究と同等に一般人レベルでも評価できるかどうかという命題の証明が優先的に必要であると判断した。このため、現在は最終年度に予定していた外来問診票を用いた非医療従事者における再現性の確認のための試験開始の準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、当初本研究で作成した診断予測アルゴリズムを用いた血液培養検査施行基準の妥当性を多施設共同研究により評価し、新たな血液培養施行基準の策定を目標としていた。しかし最終目標である一般人向けの東京消防庁の救急受診ガイドへの導入のためには、血液培養検査を要する菌血症の有無を一般人レベルでも本研究と同等に評価できるかどうかという命題の証明が優先的に必要であると判断した。このため、最終年度に予定していた外来問診票を用いた非医療従事者における再現性の確認のための試験を行うため、現在準備を行っている。2016年9月の試験開始を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、本研究専属の事務作業員を雇用する予定としていたが、研究業務遂行の過程で当該年度での利用は不要と判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は次研究実施におけるデータ整理などにおいて、事務作業員を要すると判断している。また、当該年度において英文校正の質を担保する上での必要経費であり、これらに対する費用に使用する予定である。
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