研究実績の概要 |
【目的】高齢者心不全は超高齢化社会を迎えた我が国において主要な社会問題であり、不全心の問題だけではなく、心臓以外の合併症を多く抱えている。また、近年では軽度認知障害(MCI; mild cognitive impairment)が注目され、心不全管理においても、明らかな認知症よりもMCI を スクリーニングにより早期発見することが重要と考えている。認知症の原因として、終末糖化産物(AGEs)であるペントシジンが注目され、糖尿病、高血圧など生活習慣病との関連が報告されている。 【方法】心不全入院した患者を対象に、退院前にMe-CDTによる認知機能のスクリーニングと血中ペントシジン濃度の測定を行った。また、退院後の心不全再入院、死亡など予後調査も行った。 【結果】Me-CDTによる認知機能のスクリーニングを行なった心不全患者202例(70±11歳)のうち、130名(64%)が8.5点以下で認知症の疑い、9点以上の正常は72名(36%)であった。また、血中ペントシジン濃度は、再入院群の方が有意に高値(0.116±0.069, 0.041±0.017μg/ml, p=0.0007)であり、Me-CDTの点数とは負の相関関係を認めた(r=-0.52, p=0.02)。心不全患者の認知機能低下と再入院の関連について予後調査を施行し、3年間では関連を認めなかったが、1年以内での心不全再入院において、再入院群の方が有意差にMe-CDTの点数が低下していた(5.8±2.5, 7.1±2.4, p=0.04) 【結論】心不全の再入院における認知機能低下は重要なファクターであり、かつAGEsであるペントシジンは認知機能や心不全再入院と関連を認めた。フレイルの一要素である認知症、特にMCIについては、まずはスクリーニングが重要であり、今後は前向きの介入により心不全再入院が可能かの検証が必要である。
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