研究課題
1.DEN+高脂肪食モデルを用いたメタボローム解析の結果、癌部でアシルカルニチンが著明に増加しており、その原因としてアシルカルニチン合成を促進する酵素の発現が上昇する一方で、分解する酵素が低下していることが影響していると考えられた。中でも分解酵素のCPT2の発現低下は、各種の肥満・NASH関連肝癌モデルに共通して認められる所見であり、病態進展に重要であるものと考えられた。そこでin vitroでマウスDEN由来肝癌細胞株Dih10を用いてCPT2のノックダウンを行ったところ、CPT2発現低下は脂肪酸β酸化を低下させ酸化ストレスの発生を抑制することによって、細胞を脂肪毒性から回避させる作用があることがわかった。またその下流因子としてJNKの活性化を低下させることが重要であることが示唆された。2.アシルカルニチンは組織中だけでなく、担癌マウスの血清レベルでも増加していたため、NASH患者の血清でも同様に調べてみた。するとHCC患者では非HCC患者に比べて血清アシルカルニチンが有意に増加していることが分かり、マウスと同様の現象がヒトNASH関連肝癌でも生じている可能性が示唆された。現在アシルカルニチンそのものの発癌促進作用について解析中である。3.また脂肪酸合成に重要な転写因子SREBP1の活性化に必須の分子である、SCAPの肝臓特異的欠損をマウスを作製し、そのフェノタイプの解析を開始した。現在種々の肝発癌モデルとの交配を進めている。
2: おおむね順調に進展している
マウス肝癌モデルを用いたメタボローム解析によって、肥満関連肝癌に特異的に生じている代謝変化を同定し、その意義についての解析が順調に進んできている。加えてヒト検体でも同様の変化を確認することができた。また肝臓特異的SCAP欠損マウスについてもフェノタイプの解析に至った。
肥満関連肝癌における代謝変化の意義を、in vivo, in vitroの実験によってさらに検証していくと同時に、SCAP欠損の癌に与える影響についても解析をすすめる。
今年度はin vitroの解析がメインであったため、当初の予定ほどの研究費はかからなかった。しかし来年度は再びin vivoでの解析に入るため、より研究費が必要になると考えられる。
カルニチンによるin vivoでの肝癌促進作用の検討に際し、高脂肪食や病理標本作成費用にあてる。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cancer Cell.
巻: 29 ページ: 935-48
10.1016/j.ccell.2016.04.006.