研究課題/領域番号 |
15K19314
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
人見 祐基 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10525819)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲノムワイド関連解析 / 原発性胆汁性肝硬変 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)は、肝臓内の胆管における炎症・破壊による、胆汁の肝臓への鬱滞を原因とする疾患である。その発症には、胆管上皮細胞を標的とした自己免疫の関与が示唆されているが、発症メカニズムや病態は未だ不明である。申請者らの研究グループは、疾患の罹りやすさに関連する遺伝子を網羅的に探索するゲノムワイド関連解析(GWAS)を用いて、PBCの疾患感受性遺伝子探索を実施した。本研究では、これらのPBC感受性遺伝子を対象として、発症に直接寄与する機能的な遺伝子多型の同定 、および、その遺伝子多型に起因する発症分子メカニズムの解明を目指す。 平成27年度は、以下に示す研究成果が得られた。 1.PBC感受性遺伝子TNFSF15領域内においては、発症に直接関与する遺伝子多型は同定されておらず、TNFSF15がどのように発症に関与するかは不明であった。そこで、データベースを駆使したin silico解析や、マルチプレックス遺伝子型タイピング法であるDigiTag2法を利用した症例対照関連解析などを実施し、発症に寄与する機能的な遺伝子多型としてrs4979462を同定した。さらに、in vitro機能解析や患者検体を用いた発現解析を実施し、rs4979462に起因する発症メカニズムを解明した(Hitomi Y et al., Human Genetics 2015)。 2.平成27年度より東北大学東北メディカル・メガバンク機構と開始した共同研究によって、日本人PBCのGWASデータ・日本人全ゲノムシークエンスリファレンスパネルを利用する全ゲノムインピュテーション解析のデータが得られた。ここに、データベースを駆使したin silico解析を組み合わせることで、これまでに同定されている日本人PBC感受性遺伝子について、発症に寄与する機能的な遺伝子多型の候補を選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
その理由を以下に列挙する。 1.当初の研究計画通り、日本人を対象としたGWASにて同定されたPBC感受性遺伝子について、発症に寄与する機能的な遺伝子多型の候補の選定が完了したため。 2.さらに、一部のPBC感受性遺伝子において、発症に直接寄与する機能的な遺伝子多型の同定・その遺伝子多型に起因する発症分子メカニズムの解明に至ったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに我々の研究グループが報告した日本人のPBC感受性遺伝子については、平成27年度までに、発症に寄与する機能的な遺伝子多型の候補を選定している。 平成28年度は、各遺伝子について、これらの機能的な遺伝子多型の候補からの絞込み、および、遺伝子多型に起因する発症分子メカニズムの解明を推進するために、以下の解析を実施する。 1.それぞれのPBC感受性遺伝子を対象としたin vitroの機能解析 2.遺伝子多型による遺伝子発現への影響を検討するためのeQTL解析 3.血清や末梢血単核球を用いた発現解析
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度より東北大学東北メディカル・メガバンク機構と開始した共同研究によって、日本人PBCのGWASデータ・日本人全ゲノムシークエンスリファレンスパネルを利用する全ゲノムインピュテーション解析のデータが得られた。その結果、当初予定していた、半導体型次世代シークエンサー(ion PGM)を用いたPBC感受性遺伝子領域内の再シークエンスや、マルチプレックス遺伝子型タイピング法であるDigiTag2法を利用した症例対照関連解析を実施する必要が無くなった。このことが次年度使用額が生じた大きな要因となった。また、海外で開催された国際学会において、本研究に関する発表演題数が少なかったことも、次年度使用額が生じた要因の一つである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に生じた次年度使用額を利用して、平成28年度は、それぞれのPBC感受性遺伝子を対象としたin vitroの機能解析に加え、血清や末梢血単核球を用いた発現解析を実施する予定である。さらに、in silico解析を推進するために、有償の解析ソフトを購入する予定である。さらには、積極的な国際学会での発表や論文の投稿を計画している。
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