研究実績の概要 |
胃神経内分泌癌の病態成立に必要な遺伝子群の同定を行い、それを治療の標的とするために、胃腺癌と胃神経内分泌癌における遺伝子異常の解析を行った。遺伝子変異についてIon Proton シーケンサを用い、55遺伝子250箇所の変異を解析し、メチル化異常についてInfinium Human Methylation450 BeadChipによるゲノム網羅的なDNAメチル化解析を行いまいした。胃神経内分泌癌に特異的な遺伝子変異は認められなかったものの、メチル化異常として、13遺伝子(RPL37, ZNF175, SLC7A5P1, HAPLN3, GNG7, CCDC126, ZFP3, EIF2C1, HFN1B, ZNF665, TLE1, TMCO1, TMPRSS2)が同定されました。これらのうち、血管増殖を抑制する作用が報告されている遺伝子をデータベースサーチにより同定しました。神経内分泌癌におけるVEGFR2の発現レベルを周囲組織や胃腺癌と比較したところ、有意に高発現であり、治療標的と成り得ると考えられました。 進行胃癌においては、VEGFR2に対する抗体薬であるramcirumabが保険適応で使用されておりました。胃神経内分泌癌に対する標準治療はなく、胃癌に準じた治療を行う事ができますので、VEGFR2抗体薬を含む化学療法を施行したところ著効しました。同症例の腫瘍部位のVEGFR2の発現は非常に高く、治療効果を裏付けるものでありました。これまでの過程を論文として報告しております。
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