研究課題
リン酸化型RXRαが肝発癌に及ぼす影響について、RXRα遺伝子改変マウスを用いて検討を行った。始めに、肝発癌モデルとして一般的なDiethylnitrosamine(DEN)モデルを用いた。遺伝子改変マウスをリン酸化RXRα発現群と非発現群(対照群)の2群に分け、DEN(25mg/kg)を生後15日でそれぞれ服腔内投与した後、月齢6カ月にて屠殺・解剖を行い、DENに対する発癌感受性を検討した。リン酸化RXRα発現群では、対照群と比較して肝腫瘍の総数(リン酸化RXRα群 vs 対照群;33.61±11.98 vs 8.14±7.66個)や腫瘍最大径(リン酸化RXRα発現群 vs 対照群;5.36±2.54 vs 2.86±1.21mm)が有意に増加し、総腫瘍に占める肝細胞癌の割合も有意に増加した。さらに、RXRα遺伝子改変マウスで確認された肝腫瘍では、PCNA陽性細胞数が有意に増加しており、細胞増殖能が高い状態にあった。また、細胞周期制御蛋白である、Cyclin D1の遺伝子・蛋白発現が増加し、下流のリン酸化Rb蛋白やPCNA蛋白の発現も増加していた。加えて、Cyclin D1の発現調節に関わるβ-cateninの蛋白発現にも増加を認めた。β-catenin発現を制御するGSK3βの遺伝子変異やリン酸化修飾について検討したが、RXRα遺伝子改変マウスと対象マウスの両群でGSK3β遺伝子に変異は無く、リン酸化蛋白発現にも差を認めなかった。これらの事実から、リン酸化RXRαは、DEN肝発癌モデルでは、β-catenin/Cyclin D1を介した増殖シグナルを亢進させることで肝発癌に関与することが明らかになった。本研究は、in vivoの肝発癌におけるリン酸化RXRαの関与を明らかにし、その肝発癌治療のターゲットとなる可能性を示唆する意義ある成果を示した。
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