Elastase1CreマウスとROSA26マウスと交配させた後にX-gal染色を行い、膵腺房細胞におけるCre recombinase発現効率を確認したところ、全腺房細胞の1-2%程度であった。本研究では、同マウスとKrasLSL-G12D/+マウスを交配させ、さらに腫瘍形成を促進するためにTrp53flox/floxマウスを交配させることで、Kras遺伝子変異およびp53遺伝子欠損を伴う腫瘍部とそれぞれの遺伝子変異および欠損を伴わない正常膵の対比が可能な膵発癌マウスを作製した。同マウスは3か月齢で肉眼的に膵腫瘤を認め、組織学的に膵癌であることを確認した。さらにROSA26マウスと交配させCre発現を検討すると、癌部でX-gal染色が陽性となり、非癌部でX-gal染色が陰性となることが確認できた。 アミノレブリン酸(5-ALA)を尾静脈より投与した3か月齢のKrasLSL-G12D/+ Trp53flox/flox Elastase1Cre、KrasLSL-G12D/+ PDX1Creおよびコントロール(PDX1Cre)の膵凍結切片を用いて、5-ALA中間代謝物であるPpIX発現の有無を蛍光顕微鏡で評価した。同時に連続切片をHE染色し、組織学的に評価を行った。PDX1Creの正常膵腺房細胞において蛍光発現は認められなかった。KrasLSL-G12D/+ PDX1Creでは、腺房細胞でも蛍光発色を認めたものの、前癌病変PanIN部、癌部においてより強い蛍光発色を認め、進展に伴う発色増強が示唆された。さらに、KrasLSL-G12D/+ Trp53flox/flox Elastase1Creでは癌部において強い蛍光発色が認められた。今後、正常部とのさらなる比較検討が必要であるが、前癌病変の検出に5-ALA中間代謝物が有用である可能性が考えられた。
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