癌微小環境は、癌の増悪に大きく寄与することが明らかとなってきているが、主要構成因子の一つである線維芽細胞に注目し、その役割と治療対象としての可能性を明らかにする研究を遂行している。本研究は、1.線維芽細胞の活性化に寄与する、癌細胞から分泌される因子、特にエクソソームの重要性を明らかにすること、2.線維芽細胞を活性化させるエクソソームを同定し、その機能解析を行うこと、3.担癌患者の血中を循環するエクソソームの解析を行い、新規バイオマーカーや治療標的の可能性を明らかにすることを目的としたものである。これまでに、各種培養大腸癌細胞株や皮下移植腫瘍マウスモデルを用いた検討において、癌細胞の中でも、特にp53機能欠損大腸癌細胞の共在により、線維芽細胞が活性化することを明らかとし、学会発表を行った。同時に、活性化した線維芽細胞が腫瘍増大に重要な役割を果たしていることを示した。さらに、その詳細な活性化機構における癌細胞由来エクソソームの役割を明らかとしている。現在、エクソソーム中に含まれる重要な分画を同定し、その機能解析を順次行っている。今後、その新規標的因子による線維芽細胞の活性化機構について基礎的検討を重ねていく予定である。さらに、臨床検体として血清や切除検体の収集を遂行しており、これらを用いて大腸癌の悪性度との相関や新規治療標的または新規バイオマーカーとしての有用性を検討していく予定である。
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