研究課題
我々は前年度までに、大腸癌細胞との共在により線維芽細胞が活性化されること、線維芽細胞の活性化に大腸癌細胞から分泌されるエクソソームが重要な役割を果たしていることを明らかにした。すなわち大腸癌細胞株の培養上清より抽出したエクソソームを線維芽細胞に添加すると、αSMA、TGFβ、VEGFなどの癌関連線維芽細胞関連マーカーの発現上昇を認めた。また、エクソソームの分泌機構において重要であるRab27aの癌細胞における発現をsiRNAを用いて抑制すると、線維芽細胞との共在によって認められる皮下移植腫瘍モデルマウスの腫瘍増大が抑制された。この現象は、p53変異大腸癌細胞やp53機能欠損大腸癌細胞ともに同様に認めたため、最終年度はp53野生型大腸癌細胞株とp53機能欠損大腸癌細胞株のそれぞれの培養上清より抽出したエクソソームをマイクロアレイ法を用いて網羅的に比較検討した。さらに公開されているデータベースを用いてマイクロRNAを絞り込み、前駆体を線維芽細胞株に添加し活性度を見ることで、線維芽細胞活性化を起こす原因となるマイクロRNAを同定した。また、同定したマイクロRNAのエクソソーム中の発現が、癌細胞のp53発現を抑制することによって増加することを明らかにした。本研究により、大腸癌細胞と線維芽細胞がエクソソームを介してクロストークを行っていることが明らかとなり、エクソソームあるいはエクソソーム中に含まれるマイクロRNAが新規治療標的となる可能性やバイオマーカーとしての有用性が示唆され、非常に重要な意義があると考える。
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Carcinogenesis
巻: 37 ページ: 972-984
10.1093/carcin/bgw085.