研究課題/領域番号 |
15K19331
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
友成 哲 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (20556807)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ソラフェニブ / 耐性 |
研究実績の概要 |
ソラフェニブは肝細胞癌の増殖や血管新生に関わるmultikinase inhibitorであり、大規模臨床試験により生存率を有意に延長することが示されたが、その奏功率はきわめて低く(2~3%)、耐性機序の解明と効果を予測するバイオマーカーの開発が求められている。本研究では、まず申請者がこれまでに樹立したソラフェニブ耐性株のクローニングを行い、各耐性クローンと親株を用いてヒト全遺伝子をマイクロアレイにより網羅的に解析するとともに、miRNAアレイを用いてmiRNA発現を網羅的に解析する。次いで、mRNAアレイとmiRNAアレイの結果を統合解析することにより、ソラフェニブ耐性に関わる遺伝子を同定し、その発現調節機序を明らかにする。さらに、これらの解析結果を基にソラフェニブ耐性に関わる新しいバイオマーカーを開発することを目的とした。まず肝癌細胞株PLC/PRF5をソラフェニブに持続的に暴露することによりソラフェニブに高い耐性を示す細胞株を樹立した。その後、ソラフェニブ耐性細胞の培地を除去し、PBSで洗浄し、0.2%trypsin/0.02%EDTAを添加し培養表面全体にいきわたらせ、馴化培地を添加しピペッティングにより細胞を分散し単一細胞率の高い細胞浮遊液を調整した。細胞浮遊液を馴化培地で希釈し、10cells/mlの濃度に調製し、細胞浮遊液をピペッティングしよく分散させたあと、浮遊液100μlをとって96well plateに移した。位相差顕微鏡下で、細胞が一個だけ入っているwellをマークして培養し、マークした細胞が増殖したら順次大きなwellに移し替えて継代培養を繰り返した。その結果、親株に比べてIC50が1.8倍の低耐性クローン(PLC/PRF5-R1)及び4.6倍の高耐性クローン(PLC/PRF5-R2)を樹立することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソラフェニブ耐性クローンの樹立にやや時間を要したが、その他はおおむね順調に進展している。Preliminaryな結果ではあるがWestern blot法を用いて細胞膜トランスポーターの遺伝子発現を検討したところ親株と比較し、耐性細胞ではMRP3が過剰発現してることを確認した。今後siRNAを用いてMRP3のknock downを行い、耐性細胞のcell viabilityに変化がないか確認する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
耐性の機序解析を行うために必要な低耐性クローン(PLC/PRF5-R1)と高耐性クローン(PLC/PRF5-R2)の樹立に成功した。今後、ヒト全遺伝子をマイクロアレイにより網羅的に解析するとともに、miRNAアレイを用いてmiRNA発現を網羅的に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ソラフェニブ耐性クローンの樹立が予定よりやや遅延したためマイクロアレイやmiRNAアレイなどの網羅的解析を平成27年度内に行うことができなかったことが理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は平成27年度内に行う予定であったマイクロアレイやmiRNAアレイといった網羅的解析を行い、次いで、mRNAアレイとmiRNAアレイの結果を統合解析することにより、ソラフェニブ耐性に関わる遺伝子を同定し、その発現調節機序を明らかにする。
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