研究課題
肝細胞癌の悪性腫瘍に占める死亡率は全世界で第5位であり、とくに本邦をはじめとするアジアにおいて高く、有効な治療法の確立が急務である。肝細胞癌はほとんどの抗癌剤に自然耐性を示すことから、経動脈的化学塞栓療法やラジオ波焼灼療法などの局所治療を中心に行われている。一方、近年、肝癌細胞の増殖や血管新生に関わる複数のキナーゼを阻害する分子標的薬ソラフェニブが開発され、大規模臨床試験(SHARP study)により進行肝細胞癌患者の生存期間を有意に延長することが示されたがその奏効率は極めて低く(2~3%)で耐性機序の解明とそのバイオマーカーの開発が求められている。申請者らは、これまで肝細胞癌細胞株であるPLC/PRF5細胞をソラフェニブに持続的に暴露することによりソラフェニブに高い耐性を示す細胞株を樹立した。すなわち、親株に比べてIC50が1.8倍の低耐性クローン(PLC/PRF/5-R1)及び4.6倍の高耐性クローンを樹立した。これらのソラフェニブ耐性クローンを用いて、トランスポーターであるMRP3が過剰発現していること、MRP3をノックダウンすると感受性が回復することを示し、MRP3が耐性因子であることを明らかにした。さらに、ソラフェニブ治療を行った9例の進行肝癌症例の臨床検体を用いてMRP3の発現を調べたところ、ソラフェニブが無効であった症例ではMRP3蛋白の発現が高いことを見出した。つまり、申請者らは肝細胞癌のソラフェニブに対する獲得耐性および、自然耐性にMRP3蛋白が関与していることを見出した。
すべて 2016
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Oncotarget
巻: 7 ページ: 7207から7215
10.18632/oncotarget.6889.