研究実績の概要 |
大腸鋸歯状病変の一つであるSessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)は、右側結腸に好発し、高い癌化ポテンシャルを有することが報告されているが、その発生機序及び発癌機序は不明である。本研究において、右側結腸ACF、SSA/P 及び右側結腸癌組織を用いてDNA メチル化アレイによる網羅的解析、MSP解析及び免疫染色を行ったところ、PQLC1, HDHD3, RASL10B, GJA3, SLC26A2, FLI1 の6つの遺伝子がACF、SSA/P、右側結腸癌の順に高率にメチル化されていることを見出した。一方、SSA/Pでも脱メチル化遺伝子を多く認めた(41.6個)が、右側結腸癌ではさらに多くの遺伝子が脱メチル化していることを見出した(214個)。さらに、今回解析したSSA/Pに共通する脱メチル化遺伝子として、S100P、PKP3, MUC2, S100A2の4遺伝子を同定した。TaqMan PCRでは、正常粘膜と比べS100P, MUC2, S100A2のmRNA量の有意な亢進が認められた。免疫染色では、正常粘膜と比べ病変部(SSA/Pや右側結腸癌)ではS100Pの発現が著明に亢進していた。以上の検討により、ACF-SSA/P-cancer sequenceにおいて、S100P、PKP3, MUC2, S100A2の4遺伝子、特にS100A2の脱メチル化がSSA/P発生や癌化において重要な役割を担っていることが示唆された。現在、ヒト正常大腸粘膜組織、ACF組織、SSA/P組織及び右側結腸癌組織を採取しオルガノイド培養を行っており、これら標的遺伝子の発現を変化させることによる腫瘍形成や悪性度の解析を行っており、今後は更なる検討を行っていく予定である。
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