研究実績の概要 |
SSA/P、cancer in SSA/Pより内視鏡下に生検組織を採取し、DNAを抽出したのちMIAMI法によりメチレーションアレイ解析を行った。アレイ解析により抽出された脱メチル化遺伝子の発現は、新たな生検組織でTaqMan PCR及び免疫染色により評価するとともに、MassARRAY解析によりDNA脱メチル化の定量的解析を行った。次いで、大腸癌培養細胞を標的にこれらの遺伝子のsiRNA を用いたノックダウン実験を行い、cell proliferation assayを行うことにより機能解析を行った。SSA/Pにおける脱メチル化遺伝子は平均41.6±27.5個(癌では214±19.8個)であり、このうちSSA/P7例に共通する脱メチル化遺伝子として、S100P、PKP3, MUC2, S100A2の4遺伝子を同定した。TaqMan PCRでは、S100P, MUC2, S100A2のmRNA量の亢進が認められたが、免疫染色では、S100Pの発現のみ著明に亢進していた。さらに、MassARRAY解析にてMIAMI法で同定したS100Pのプロモーター、exon1及びintro1領域が30%程度脱メチル化されていることを確認した。また、大腸癌細胞株(HT29,WiDr)を標的にS100P遺伝子のsiRNAを用いたノックダウン実験を行ったところ、両細胞株とも細胞増殖は有意に抑制された。SSA/P組織を用いてオルガノイド培養を行い、ノックダウン実験を行ったところ、細胞増殖が抑制された。SSA/Pの発生、癌化には、BRAF変異、遺伝子のメチル化、MSIに加え、S100P遺伝子の脱メチル化も重要な役割を果たすことが示唆された。本研究によりSSA/P-cancer sequence において、遺伝子のメチル化だけではなく、脱メチル化によっても癌化が促進することが推測された。
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