研究課題
慢性炎症にて線維化した肝臓は、肝細胞癌の発生母地となるため、線維化肝に対する抗線維化療法が求められている。肝の線維化には肝免疫担当細胞と肝星細胞が関与する。ATPは全ての細胞内に存在するエネルギー源であるが、細胞障害により細胞外に放出されたATPはDAMP(damage associated molecular pattern)として働き、免疫担当細胞を活性化し、炎症の形成と維持に関与する。肝の線維化は慢性炎症の後に起こるため、炎症に関わるDAMPの一種である細胞外ATPが肝星細胞の活性化と肝の線維化に寄与する可能性がある。しかしながら、細胞外ATPと肝星細胞の活性化、肝の線維化の関わりについては明らかになっていない。一方、CD39は細胞外ATPの分解酵素で、制御性T細胞などの免疫制御を担当する細胞に高発現し、炎症局所にて細胞外ATPを分解、免疫制御を担うアデノシンに変換し、炎症を鎮静化する。そのため、CD39は免疫制御に関わる因子の一つと考えられている。本研究では肝星細胞がATPにより活性化すること、肝星細胞に発現するCD39がATPを分解することで、ATPによる肝星細胞の活性化が阻害されることを明らかにし、CD39を用いた新しい抗線維化治療を開発することを目的とする。初年度では、肝星細胞のATPによる活性化を肝星細胞の細胞株である、LX-2で確認した。さらに、LX-2が細胞がATPを分解することも明らかにした。最終年度は、ATP刺激による肝星細胞の活性化、コラーゲンの産生をマウスの初代肝星細胞にて確認した。さらに肝星細胞上にATPのレセプターであるP2X7が発現することを明らかにした。またin vivoにおける肝線維化におけるCD39、ATPの役割を検討中である。今後はATPと肝星細胞上のP2X7no役割を明らかにしたい。
すべて 2016
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Nat Protc
巻: 11 ページ: 1163-74
10.1038/nprot.2016.073