研究課題
これまで、in vitroの実験より、飽和脂肪酸の中でも特にパルミチン酸による肝細胞アポトーシスが引き起こす炎症がNAFLD病態に影響を与えるとされてきた。しかし、in vivoにおけるパルミチン酸の役割は不明である。今回我々は、in vivoにおけるパルミチン酸投与は、普通食負荷(BD)マウスではALT上昇は起こらないが、高脂肪食負荷(HFD)マウスではALT上昇を起こすことを示した。腸管滅菌を行ったHFDマウスではパルミチン酸投与によるALT上昇が起こらないことから、腸管由来のエンドトキシンがALT上昇の重要な因子であることが示唆された。BDマウスにおいて、HFDマウスと同程度の血清エンドトキシン値となる LPS(超微量LPS)投与は炎症細胞浸潤およびALT上昇を起こさないが、パルミチン酸および超微量LPSの投与はアポトーシスを起こし有意なALT上昇を引き起こすことから、パルミチン酸とLPSが共同することが示唆された。さらに、BDマウスへのパルミチン酸投与はALTの上昇をきたさないがTLR4経路を介したケモカイン発現により肝臓に好中球遊走およびマクロファージ浸潤を引き起こすこと、さらには微細な肝線維化を起こすことを示した。パルミチン酸が引き起こす線維化シグナルは、クロドロネートやLy6Gによる炎症細胞除去でも起こることを示した。一方で、超微量LPSは線維化シグナルを起こさなかった。パルミチン酸および超微量LPSを投与すると、ALTの上昇とともに肝線維化シグナルは増強した。今回の検討から、in vivoにおけるパルミチン酸単独はALTの上昇を伴わない肝臓への炎症細胞浸潤と微細な肝線維化を起こすことを示した。また、パルミチン酸は腸管由来のエンドトキシンと共同することでNAFLD病態を増悪させることを示した。これらはこれまでにない新規の知見である。私たちの結果は、NAFLD治療には腸管由来のエンドトキシンの低減のみならずFFAの低減が必要であることを示唆している。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Sci Rep.
巻: 7 ページ: 42477.
10.1038/srep42477.
Hepatol Res.
巻: 46 ページ: 1011-1018
10.1111/hepr.12648.
巻: 6 ページ: 22251
10.1038/srep22251.