研究課題/領域番号 |
15K19341
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
今城 健人 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30600192)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / NASH / microRNA-27b / エンドトキシン |
研究実績の概要 |
1)微量ETの脂肪肝炎病態進展への関与;高脂肪食下で飼育した脂肪肝モデルマウスに対して微量ET(0.01 mg/kg;脂肪肝モデルマウスに単回投与しても肝障害を来さない量)を28日間連日腹腔内に投与したところ、単回投与では肝障害を起こさなくても連日投与では顕著な肝内炎症及び線維化、肝内中性脂肪(TG)及び脂肪酸(FA)の蓄積を認めた。2)微量ETのmir-27bへの関与;上記と同量の微量ETを1回投与した後、miRNAのmicroarrayによる肝の網羅的解析を行い、microRNA-27b(mir-27b)が著明に亢進していることを発見した。3)mir-27bの脂肪肝炎病態進展への関与;mir-27bの機能解析のため、肝細胞特異的mir-27bトランスジェニックマウスを作製し、普通食(BD)で飼育したところ、コントロールに比し肝臓内に著明な脂肪化を呈したが、高脂肪食で飼育するとさらに著明な脂肪化のみならず肝内炎症、アポトーシス、肝線維化を来していた。即ち、肝細胞に特異的なmir-27bの発現が脂肪肝炎病態進展に関与することが示唆された。さらにはBD飼育下B6マウスにmir-27bを投与すると、著明な脂肪蓄積と同時に脂質排泄のkey factorであるmicrosomal triglyceride transfer protein (MTP)や脂質β酸化のkey factorであるPPARαの低下及び脂質合成のkey factorであるSREBP1cの亢進を示した。この結果は以前に我々がヒトNASH病態への関与を指摘したMTPの発現低下(Fujita et al, Hepatology, 2009)がmir-27bによって起こるという極めて新規性の高い結果であった。4)ヒトNASHにおけるmir-27b発現及、血中ET定量及び肝内FFA量の検討;非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者において、肝組織中のmir-27b mRNA発現、血中ET活性及び肝内FFA、特にパルミチン酸は単純性脂肪肝(NAFL)に比し有意に高いことが示された。さらに血中ET活性はmir-27b mRNA発現と有意な正の相関を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では平成27度中に、微量ETの肝mir-27b亢進を介した脂肪肝炎病態進展機序の解明のための実験を行う予定であった。即ち、微量ETによって亢進しているmir-27bが肝MTP阻害を介して肝内FFAを増加させるか否かを検討するために、肝臓においてMTPを過剰発現したマウスへの微量ET投与実験を、またmir-27bの阻害剤を用いることにより、微量ETによる肝内FFA増加を抑制し肝障害を抑制できるかを検討する予定であったが、こちらまだ施行できていない。しかしながら、それ以外の検討はほぼ計画通りに進捗しており、評価としてはおおむね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
微量ET単回投与による肝mir-27b亢進機序を解明する; 脂肪肝モデルマウスではBD飼育下正常肝に比し、微量ET単回曝露に対して過剰に反応しかつ肝MTPを著明に低下することが我々の予備実験により示されている。また、炎症性cytokineが直接的に肝細胞でのMTP発現を低下させることは報告されている。しかしながら、炎症性cytokineが生じない条件下でもmir-27bの発現が亢進していること結果を見いだした。即ち、微量ET-mir-27b-肝MTP低下が重要なシグナルと考える。上記のようにMTP過剰発現マウス及びmir-27b阻害実験を用いてこの仮説の裏取りを行っていくことと同時に、肝細胞特異的toll like receptor 4(TLR4)KOマウス(Alb-cre TLR4fl/flマウス)を作成し、高脂肪食で飼育後に微量ETを投与することにより、脂肪肝における微量ETによる肝mir-27bの著明な増加が,我々の提唱したクッパー細胞(マクロファージに含まれる)におけるレプチンシグナルを介したET過剰応答が起こる以前により惹起されているのかを検討する予定である。
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