本研究では我々の発見した脂肪肝でのエンドトキシン(ET)過剰応答がもたらす炎症を契機として上昇したmicroRNA-27b(mir-27b)による肝障害進展機序の解明を目的とする。 3)mir-27bの脂肪肝炎病態進展への関与;前年度の肝細胞特異的mir-27bトランスジェニック(Tg)マウスを用いた実験により肝細胞特異的mir-27bの発現亢進が脂質代謝を障害し、脂肪肝炎病態進展へ関与することを示した。さらに本年度では、mir-27bのmimicを投与することにより普通食飼育下マウスでは著明な脂肪肝を、高脂肪食飼育下マウスでは線維化進展を認めており、Tgマウスの結果と一致していた。また、高脂肪食飼育下肝細胞特異的TLR4KOマウス(Alb-cre TLR4fl/flマウス)に対する微量ET投与による肝mir-27b発現が抑制されることを確認した。 4)ヒトNASHにおけるmir-27b発現及び血中ET定量及び肝内FFA量の検討;前年度の検討により、NASH患者において肝組織中のmir-27b発現及び血中ET活がNAFLに比し有意に高いことが示された。さらに血中ET活性はmir-27b発現と有意な正の相関を示した。 本年度では、NASH患者における糞便のメタ解析を行い、NASH患者では特定の腸内細菌の異常、特にFaecalibacterium(FB)が減少することを示した。また、FBは腸管壁のバリアに関与しており、FBが低下することで腸管透過性が亢進し、血中ET活性が亢進することが示された。 上記により、NASH患者では腸管内のFBが低下することにより腸管透過性が亢進し、血中にETがなだれ込む。ETは肝臓に炎症を起こすのみならず、TLR4経路を介して肝mir-27bを活性化する。Mir-27bは肝脂質代謝を障害し、肝内炎症や肝線維化を亢進することが予想された。
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