神経機能検査(NPテスト)を用いて、肝硬変患者の神経機能異常を精査、ミニマル肝性脳症の診断を行いその解析を行った。①肝硬変患者においてミニマル肝性脳症は約33%に認め、本邦における従来の報告と大きな差異がないことを確認した。②また、本邦では肝硬変患者の高齢化が進行しており、NPテストにおいて70歳以上の神経機能異常の評価の指標がないため、70歳以上の健常高齢者の対象として行った結果から健常者の10%-90%タイルをカットオフ値として70歳以上の高齢者の神経機能異常を判定し、ミニマル肝性脳症の診断の指標を作成した。③超高磁場MRI装置を用いて、高精度MRSの測定、MRI、Diffusion imageを撮像、測定し,MRSでの検討において、ミニマル脳症を認める肝硬変患者群とミニマル肝性脳症を認めない肝硬変患者群を比較し脳内グルタミンの増加と脳内ミオイノシトールの減少が顕著に認められた。このことからミニマル肝性脳症患者においても従来から顕性脳症患者で確認されているものと同様の脳内物質代謝異常が発現していることが示唆された④ミニマル肝性脳症の新たなバイオマーカーの検索として、血清カルニチンを測定し、以前から報告されている血清アンモニアと同様に血清総カルニチンと血清アシルカルニチンの比(Ac-CA / T-CA ratio)が予測因子となることを指摘した。⑤肝硬変患者のおけるミニマル肝性脳症患者の発症予測因子を検討し、血中のアンモニア値の上昇、クレアチン値の上昇、eGFR値の低下が予測因子になることを示した。⑥超高磁場MRI装置を用いて、脳内のdiffusion kurtosis imaging (DKI)を測定し、mean kurtosis (MK)が被殻においてミニマル脳症患者群とミニマル肝性脳症を認めない肝硬変患者群を比較し減少していることが認められた。(業績文献参照)
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