研究課題
本研究では、炎症性腸疾患(IBD)の遺伝的リスク因子として報告されたLeucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)の機能異常と高脂肪食摂取との相互作用による消化管粘膜防御機構の破綻メカニズムを明らかにすることを目的とした。まず初めに消化管におけるLRRK2の発現分布を明らかにするため、マウスの全消化管組織切片を用いて抗LRRK2抗体による免疫組織化学染色を行った。その結果、小腸および大腸の粘膜固有層および筋層間神経叢において抗LRRK2抗体に陽性反応を示す細胞が観察された。次に、腸管透過性と各種遺伝子発現および薬剤誘発性腸炎に対する高脂肪食摂取およびLRRK2の影響について解析した。FITC-Dextranを経口投与し、4時間後の血中のFITC-Dextranの蛍光強度を測定した結果、高脂肪食摂取群の方が腸管の透過性が有意に低くなった。また、LRRK2-KOマウスではWTマウスと比べて腸管透過性が有意に低くかった。さらに、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)とTNBS誘発性大腸炎モデルは作成して比較したところ、HE染色の炎症病理スコアの測定において高脂肪食と通常食に有意な差異は見られず、高脂肪食摂取マウスの方が腸炎が軽減される傾向にあった。一方、LRRK2-KOマウスではWTマウスと比較してDSSによる腸炎が増悪していた。大腸炎モデルの病態スコアの結果から、DSS誘発性大腸炎モデルとTNBS誘発性大腸炎モデルで病態に変化が出たことから、Th1優位な免疫応答と、Th2優位な免疫応答でLRRK2の生理的機能が異なることが考えられた。しかし、高脂肪食摂取マウスでは腸炎が軽減したことから、更なる条件検討が必要であると考えられた。
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