研究課題
非アルコール性脂肪肝炎 (Nonalcoholic steatohepatitis: NASH)は、メタボリックシンドロームの肝臓での表現形と考えられており、その多くが肥満・インスリン抵抗性・高血圧・脂質異常症を背景因子に有する。現在、日本人の約1-2%がNASHに罹患しているとの推察がされており、今後肥満人口の増加に伴いNASH患者数は更に増加することが予想されている。NASHは進行性の疾患であり、NASH患者の約20%が肝硬変へと進行し、8%が肝臓死に至ったとの報告もあり、NASH発症メカニズムの解明およびNASH治療法の確立は急務である。肝臓PPARγシグナルは、脂肪肝形成に伴い増加することから、脂肪肝病態形成において重要な役割を担うと示唆されている。一方で、脂肪肝病態において、肝細胞の活性酸素種(ROS)蓄積が、多くのグループより報告されている。近年、Foxo4など代謝に関わる転写因子機能にROSが深く関与することが報告された。そこで、我々は、脂肪肝病態形成において、PPARγシグナルとROS蓄積の関係について検討を行なった。本研究では、遺伝子的肥満マウスおよび食餌性肥満マウスを作製し検討を行なった。遺伝的肥満マウスおよび食餌性肥満マウスのいずれいにおいても脂肪肝病態形成に伴い、肝細胞のROS蓄積を確認した。一方で、痩型コントロールマウスと比べ、肥満型マウスの肝臓において、核内のPPARγ蛋白質蓄積およびPPARγシグナル下流遺伝子Fsp27発現量が有意に増加した。ROSスカベンジャー物質であるカタラーゼをマウスに投与すると、PPARgシグナル減弱と脂肪肝病態形成の軽減を確認した。これらの結果より、肝臓において、肝細胞ROS蓄積は、PPARγシグナル増強を介して、脂肪肝病態形成を促進することが示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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