研究課題
B型肝炎ワクチンは、免疫不全患者で応答性が低下し、健康成人でも約1割では不応答であるとされる。また獲得した抗体価は経時的に低下・消失することが知られている。本研究ではその免疫学的機序を解析することを目的とした。1)B型肝炎ワクチンに対する免疫応答:ワクチン接種による免疫応答と抗体獲得の可否、獲得抗体価との関連を解析した。末梢血中の免疫細胞解析では、B型肝炎(HB)ワクチンを初めて接種した47例のうち、36人の抗体獲得群でのみ末梢血中のT細胞、特に濾胞性T細胞の増加が見られた(p<0.0001)。B細胞系列では、ナイーブB細胞が減少し、活性化した抗体産生細胞が誘導されていた。NK/NKT細胞、単球、樹状細胞に有意な変化は見られなかった。獲得抗体価は免疫細胞との関連はなかったが、接種前のIFN-gとIFN-g関連ケモカインであるCXCL9,10と有意な相関が見られた。2)抗体維持に寄与する因子:抗体が消失し再接種予定の62人と抗体価(anti-HBs>50 mIU/mL)を5年以上維持できた症例20人において免疫細胞と血清タンパクを比較したところ、抗体消失群では記憶B細胞や抗体産生細胞が有意に少ないことがわかった。3)ワクチン記録の後方視的解析:本学保健管理センターに保管されていたワクチン接種記録と健康診断記録を用いてワクチン接種による獲得抗体価とその維持について検討した。現在流通している抗原の異なる2つのワクチンには大きな違いは見られなかったが、以前に流通していたPre-S2タンパクを含むワクチンはより高い抗体価を誘導していた。また、初回接種でより高い抗体価を獲得した群は、男女問わず長期に抗体が維持される傾向にあった。ワクチンの再接種を行うことにより、初回と比較して2回目では有意に高い抗体価が誘導されており、より長期の抗体価維持が期待できる可能性が示唆された。
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eLS
巻: a0026254 ページ: 1-8
10.1002/9780470015902.a0026254
化学療法の領域
巻: 33 ページ: 62-67