研究課題
我々は、黄疸・肝不全型進行群173症例とPBC非進行群1204症例を対象としたゲノムワイド関連解析を実施し、最も強い原発性胆汁性肝硬変の黄疸・肝不全型進行関連遺伝子として20番染色体領域に存在する遺伝子X(OR=2.16, P=7.94x10-8)を同定した。黄疸・肝不全進行群の血中の遺伝子Xのタンパクは非進行群に比べて有意に増加し、血中総ビリルビン(r=0.66, P=1.26x10-6)、AST (r=0.58, P=7.1x10-6)と正の相関を、アルブミン(r=-0.67, P=1.1x10-6)、血小板(r=-0.74, P=4.4x10-7)と負の相関を示した。血中の遺伝子Xタンパクは、原発性胆汁性肝硬変の治療薬であるウルソデオキシコール酸治療により有意に変化しなかったが、肝移植により有意に減少した(P=8.1 x 10-4)。また、黄疸・肝不全型進行群は非進行群と比較し、肝細胞における遺伝子Xのタンパクは有意に増加し、その局在は毛細胆管側から細胞内に変化していた。
2: おおむね順調に進展している
現時点で、本研究課題に関する論文を執筆する段階にある。
原発性胆汁性肝硬変の黄疸・肝不全型進行群の肝細胞におけるXの発現増加機構を解析する。原発性胆汁性肝硬変の黄疸・肝不全型進行群の肝細胞おけるXタンパクの詳細な局在を各種細胞内マーカーを用いて解析する。肝細胞株を用いて、Xを介する肝細胞障害機構を解析する。胆汁鬱滞モデル動物におけるX遺伝子・タンパクの発現を解析し、原発性胆汁性肝硬変の黄疸・肝不全進行モデルとなりうるか検討する。もし、モデル動物となるのであればin vivoで黄疸・肝不全型進行におけるXの役割について解析する。
残額で購入可能な実験試薬がなかった為、次年度に持ち越した。
次年度の予算と合算し、必要な実験試薬、学会参加費用、旅費などに使用する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
Journal of Human Genetics
巻: 60 ページ: 525-531
10.1038/jhg.2015.59.
Human Genetics
巻: 134 ページ: 737-747
10.1007/s00439-015-1556-3