原発性胆汁性肝硬変の黄疸・肝不全型進行に関わる分子機構の解明

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15K19357
• 研究機関: 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター)
• 研究代表者: 相葉 佳洋 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 臨床研究センター, 研究員 (70450955)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 原発性胆汁性胆管炎 / 原発性胆汁性肝硬変 / カテプシン / 重症化機構

研究実績の概要

ゲノムワイド関連解析で原発性胆汁性肝硬変(PBC)の黄疸・肝不全型進行関連遺伝子として同定したカテプシンZ(CTSZ)は、PBC非進行、慢性C型肝炎の患者と比較しPBC黄疸・肝不全型進行群の肝組織で強い発現であった。肝組織においてCTSZは、肝細胞,単球,マクロファージ,クッパー細胞に強く発現しており、PBC黄疸・肝不全進行群では、特に肝細胞のCTSZタンパクの発現が増加していた。PBC非進行群、慢性C型肝炎患者の肝細胞におけるCTSZタンパクは、毛細胆管側でリソソームマーカーであるLAMP1と共局在していた。一方、PBC黄疸・肝不全型進行群の肝細胞におけるCTSZタンパクは、毛細胆管側から細胞質に局在を変えLAMP1と非共局在であった。走化性電子顕微鏡による解析から、PBC黄疸・肝不全型進行群の肝細胞内リソソームは巨大なdense bodyを含み、一部のリソソームは断片化していたことから、胆汁鬱滞に伴うリソソームの細胞内輸送障害・代謝障害・崩壊がPBC黄疸・肝不全型進行に関与している可能性が考えられた。
1週間総胆管を結紮した胆汁鬱滞モデルマウスの肝細胞は、PBC黄疸・肝不全進行群と同様に強いCTSZの顆粒蓄積が多く認められたことから、肝細胞の細胞質におけるCTSZの顆粒蓄積は胆汁鬱滞により誘導される可能性が示唆された。胆汁鬱滞により誘導される細胞内骨格の異常がCTSZの顆粒蓄積・局在変化に関与するか否かを検討するために、単層培養した肝癌細胞株HepG2を毛細胆管収縮を阻害するサイトカラシンB、微小管形成を阻害するコルヒチンで処理したが、顕著なCTSZの顆粒蓄積と局在変化を誘導できなかった。更なる検討が必要である。
肝ガン細胞株HuH7において、CTSZ過剰発現によりクロロキン、アミノ酸飢餓誘導性細胞死を促進したことから、CTSZは肝細胞死の促進に関与する可能性が示唆された。

研究成果

• [雑誌論文] Genome-wide association studies identify PRKCB as a novel genetic susceptibility locus for primary biliary cholangitis in the Japanese population. (2017)
  • 著者名/発表者名: Kawashima M, Hitomi Y, Aiba Y, Nishida N, Kojima K, Kawai Y, Nakamura H, Tanaka A, Zeniya M, Hashimoto E, Tokunaga K, Nakamura M, et al.
  • 雑誌名: Hum Mol Genet. 巻: 26 ページ: 650-659
  • DOI: 10.1093/hmg/ddw406.
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [学会発表] Cathepsin Z variants are associated with progression to end-stage hepatic failure in Japanese patients with primary biliary cholangitis (2017)
  • 著者名/発表者名: Nao Nishida, Yoshihiro Aiba, Yuki Hitomi, Minae Kawashima, Hitomi Nakamura, Noriyo Yamashiki, Tomohiro Tanaka, Sumito Tamura, Akira Mori, Shintaro Yagi, Yuji Soejima, Ken Shirabe, Atsushi Tanaka, Kenichi Harada, Shinji Shimoda Atsumasa Komori, Katsushi Tokunaga, Minoru Nakamura et al.
  • 学会等名: ヨーロッパ肝臓学会総会
  • 発表場所: アムステルダム
  • 年月日: 2017-04-22 – 2017-04-22
  • 国際学会
• [学会発表] 日本人原発性胆汁性肝硬変における黄疸・肝不全型進行関連遺伝子の同定 (2016)
  • 著者名/発表者名: 相葉佳洋、西田奈央、中村稔
  • 学会等名: 第52回日本肝臓学会総会
  • 発表場所: ホテルニューオータニ幕張
  • 年月日: 2016-05-19 – 2016-05-19