研究課題
微小血管の成熟化において重要な内皮細胞と周細胞の相互作用に関与する因子を探索する中で、Ninjurin1(Nerve injury-induced protein 1;Ninj1)を見出した。Ninj1は末梢神経の傷害時に発現する細胞接着分子として報告されたが、最近では炎症細胞や上皮細胞にも発現することが知られている。本研究では、Ninj1の血管新生・成熟化における役割を明らかにすることを目的とし、実験を行った。この目的を遂行するために、事前に以下の3つの目標を立てた。目標Ⅰ 血管新生におけるNinj1の作用解析目標Ⅱ Ninj1の血管新生作用の機序解析目標Ⅲ 下肢虚血組織内におけるNinj1の役割解析目標Ⅰ・Ⅱの達成のために、申請者らが樹立したSV40トランスジェニックマウス由来微小血管周細胞株、および内皮細胞株を用いた。Ninj1のノックダウン、過剰発現を行い、各血管新生アッセイを施行した。その結果、Ninj1をノックダウンした周細胞では血管新生作用が促進され、過剰発現した周細胞では抑制された。また、目標Ⅲの達成のため、マウス下肢虚血モデルを作成し、Ninj1発現抑制による病態改善への効果を解析した。Ninj1の発現抑制のため、Ninj1特異的siRNAを含む徐放性ゲルの虚血部位への投与を行った。組織再生度・血管新生の免疫組織学的検討に加え、ドップラー計測法による血流改善度を測定した。この検討により骨格筋組織においてNinj1が微小血管細胞に発現していること、虚血により骨格筋組織内のNinj1発現が亢進することを観察した。さらにsiRNA導入によりNinj1発現を抑制すると、虚血組織の血流改善が低下することを観察した。以上より、本研究ではNinj1は血管新生・成熟化において重要な因子であることを見出し、虚血病態において治療の標的となりうることを示した。
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