研究課題
肺血栓塞栓症(CTEPH)患者の血液を用いて作成した血栓は線溶能が著しく低下しており、血漿中TAFI抗原量及びTAFIの活性もCTEPH患者で高値を示した。また、TAFI抗原量と線溶能の低下の程度には相関関係が認められ、TAFIがCTEPHの原因にTAFIが関与している可能性が示された。我々はTAFIの抗原量を増加させる-1120G/Tの変異がCTEPH患者において一般人口のSNPsの頻度よりも高いことがわかった。さらに、我々はex vivoにおいて既存の薬剤がCTEPHの線溶能の低下を改善させるか検討した。その結果TAFI活性化阻害ペプチドと血小板活性化を抑制するプロスタグランジンE1によりCTEPHの線溶能が改善することを示し、さらにその効果は血漿中TAFIの抗原量が高いほど改善率が高かった。以上からTAFIが新たな治療標的となりうることが示唆された。さらにTAFI過剰発現マウスへのトロンビンの尾静脈注射により肺塞栓症を生じさせたところ、肺動脈内に認められる血栓が著明に増加していることが示された。しかしながらTAFI過剰発現マウスへのトロンビンの複数回投与では肺動脈内の器質化血栓が生じることは示せたが、肺高血圧症を呈するまでには至らなかった。しかしながら、TAFI過剰発現マウスを低酸素に暴露すると著しい肺高血圧症を示し、さらに肺動脈内に器質化血栓を認め、CTEPHの新たなモデルになりうる可能性が示唆された。また、in vitroにおいて肺動脈平滑筋細胞にTAFIを投与すると平滑筋の増殖が促進されることがわかり、TAFIは凝固線溶系に働くだけではなく、平滑筋にも作用することが示唆され、TAFIがCTEPHの末梢肺動脈の血管リモデリングにも関与している可能性が考えられた。
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Circ Res.
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Arterioscler Throm Vasc Biol.
巻: 36 ページ: 1293-1301
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