研究課題
肺高血圧症において、病理組織の検討は、病変の重症度や肺静脈閉塞合併の有無を明らかにするための有用な検査方法だが、侵襲的で術後に肺高血圧症の増悪を来す恐れがあるため、一般的には行われていない。しかし、これらの情報は、予後の推定や治療方針の決定に有用であり、低侵襲の肺微細構造の評価方法の確立が必要と考えられる。そこで、これまで慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の診断で用いてきた光干渉断層法(OCT)を使用し肺動脈周囲の微細構造を組織学的に診断する方法を新規に確立するため、本研究を計画した。まず、これまでデータの蓄積のあるCTEPH患者において収集したデータを解析し、肺動脈内および肺血管周囲の組織について検討を行った。これらの成果については、後述するように2015年の学会で成果を発表している。CTEPH 31症例、92病変でOCTおよびOFDIによる病変形態の観察が行われ、メッシュ様閉塞病変を63病変で、スリット状構造物を28病変で、壁在血栓を52病変で認めた。65病変(71%)は、2つ以上の病変形態を有し、14病変(15%)は3つすべての病変形態が混在していた。さらに、肺動脈周囲組織についても検討を行ったが、肺動脈周囲の静脈について、OCT(あるいはOFDI)を用いて解析を行う事が困難であり、肺動脈のリモデリングに焦点を当て、生命予後や、治療効果を予測するための形態的分類を発見できるように研究を継続する方針である。
3: やや遅れている
これまで収集した慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者において収集したデータを解析し、肺動脈内および肺血管周囲の組織について検討を行った。これらの成果については、後述するように2015年の学会で成果を発表している。31症例、計330病変のOCT画像を解析し、肺動脈内の病変形態を詳細に分類した。さらに、肺動脈周囲組織についても検討を行ったが、観察可能な範囲の肺動脈径が予想以上に大きく、近赤外線の減衰により肺動脈周囲の静脈について、OCT(あるいはOFDI)を用いて解析を行う事が困難であった。
OFDIを用いた観察により、CTEPHの病変は複雑な形態を有していることが明らかになった。血管造影のみでは、病変の範囲を特定する事が困難な場合もあるため、OFDIは治療範囲の決定にも有用である可能性があり、今後さらに検討が必要である。さらに、肺動脈性肺高血圧症でも同様の画像解析を行い、今後は肺動脈のリモデリングに焦点を当て、生命予後や、治療効果を予測するための形態的分類を発見できるように研究を継続する方針である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)
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