研究課題
肺動脈性肺高血圧症のOFDI所見では、肺静脈病変の検出が困難であったため、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)において、肺動脈病変の観察と評価を行った。また、CTEPHにおける酸素化の改善とバルーン肺動脈形成術の関連についても評価を行った。BPA施行時は、肺動脈造影の所見から病変の有無やその範囲を診断することが一般的であり、血管内イメージングにより病変の形態を詳細に観察した報告は少ない。我々はBPA施行時に、病変部をOFDI(optical frequency domain imaging)を用いて観察し、病変形態の検討を行った。当院でBPAを施行した非手術適応のCTEPH患者31名(平均年齢63歳、女性27例(87%))を対象とし、330病変に対し治療を行い、そのうち92病変(28%)でOFDIによる病変形態の観察が行われ、メッシュ様閉塞病変を63病変で、スリット状構造物を28病変で、壁在血栓を52病変で認めた。65病変(71%)は、2つ以上の病変形態を有し、14病変(15%)は3つすべての病変形態が混在していた。OFDIにより、CTEPHの病変は複雑な形態を有していることが明らかになった。血管造影のみでは、病変の範囲を特定する事が困難な場合もあるため、OFDIは治療範囲の決定にも有用である可能性があり、さらに検討が必要であると考えられた。また、同様の患者を対象にBPAがシャント率に与える影響も検討している。術前後で比較すると平均肺動脈圧(前41±8、後26±7 mmHg, P<0.01)、6分間歩行距離(前372±120、後472±143 m、P<0.01)に加え、酸素飽和度(前87±5、後91±5 %, P<0.01)、A-aDO2(前48±10、後35±11 Torr、P<0.01)も有意に改善していた。さらに肺内シャント率も有意な低下を認めた(前24±7、後21±5 %、P<0.01)。また、肺内シャント率の減少は酸素飽和度の上昇と有意な相関を示した(r2=0.40, P<0.01)。BPAは、CTEPH患者の血行動態のみならず、酸素化も改善させることが示された。
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Circulation Journal
巻: 80 ページ: 2227-2234
10.1253/circj.CJ-16-0254