研究実績の概要 |
当研究は、心房細動の重要な危険因子である加齢と肥満に共通した鍵分子であるNamptが心房細動の発症・進展に関わる上流因子であると仮説を立て、Nampt/NAD+/Sirtuin系が心房細動の発症にどのように関わっているのか分子学的機序を立証すると同時に、心房細動に対する新たな予防的治療を確立することを目的としている。主な研究結果(1)Nampt+/-はその同腹子に比べて心房細動の誘発率と誘発されて心房細動の持続時間が有意に増加した。また、高脂肪食群はぞれぞれの通常食群に比べて心房細動の誘発率と誘発されて心房細動の持続時間がさらに有意に増加した。(2)Namptタンパクと遺伝子発現、その構成要因である Sirtuin-1および関連因子であるPPAR-γはNampt+/-で有意に低下し、高脂肪食投与群ではさらに低下しており、カルシウム調節関連因子(RyR、Seraca,phospholamban)の遺伝子発現・タンパクの発現もNampt+/-で有意に低下し、高脂肪食投与群ではさらに低下した。(3)病理所見では、NamptはNampt+/-と高脂肪食投与群で有意に低下を示し、繊維化は有意に増加していた。(4)心筋細胞カルシウムイメージングによる解析と3Dマッピングによる心筋APD、ERPの結果解析は今進行中であり、暫定結果としてはNampt+/-と高脂肪食投与群でカルシウムスパークとカルシウムウェーブが増加を示し、APD、ERPは短縮傾向を示した。 結論;Nampt欠損マウスは、高脂肪食の摂取と同様メタボリックシンドローム類似の病態を惹起し、心臓で構造的リモデリングを進行させ、Caハンドリング異常によって電気的リモデリングの進行に影響を与え、心房細動が起こりやすい基質の形成に重要な役割を果たすことが示唆された。
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