研究実績の概要 |
心房細動および致死性不整脈(心室頻拍・心室細動)に対するカテーテルアブレーション治療が欧米で開発され、本邦にも普及してきたが、薬物治療を併用しても治療困難な症例が多く存在する。これらの不整脈は治療抵抗性高血圧と同様に交感神経活性亢進が病態に大きく関与することから、腎交感神経アブレーション治療が、新たな治療法として期待されている。我々は除神経達成度をリアルタイムに確認できる指標を開発していくことを目的として研究を行った。実験用動物としてウサギを用いて、ケタミン・キシラジンによる静脈麻酔の後、右大腿動脈にシースを留置し、カテーテルを用いて腎動脈内にアデノシン持続投与を行い、アデノシン投与に伴う血圧上昇反応を指標として、腎交感神経に対する高周波カテーテルアブレーションを施行した。腎交感神経への高周波カテーテルアブレーションにより、収縮期血圧は13±8 mmHg低下し、拡張期血圧も11±6 mmHg低下し、腎交感神経活性の指標である腎組織ノルエピネフリンは56±90 ng/g.kidney vs. 303±73 ng/g.kidney (p<0.01)とコントロール群に比べて有意に低下したものの、術中の麻酔深度のコントロールの難しさや、疼痛による血圧上昇、鎮痛麻酔薬であるケタミンによる血圧上昇などの相互作用により、アデノシン投与に伴う血圧上昇反応消失をリアルタイムな指標とした腎交感神経カテーテルアブレーションは、現行のモデルにおいては施行困難であり、モデル動物や麻酔方法の変更等の今後検討すべき課題が明らかとなった。臨床研究においては、心房細動を伴うLVEFの保たれた心不全(HFpEF)症例において、心房細動に対するカテーテルアブレーションによるリズムコントロールが、心不全入院のリスク低減(HR 0.34, p=0.04)に寄与していることを明らかにし、日本循環器学会で発表を行った。
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