研究課題/領域番号 |
15K19368
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高田 宗典 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70746841)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 慢性心不全 / 分子鎖アミノ酸製剤 / 心臓リハビリテーション / 運動耐容能改善 |
研究実績の概要 |
慢性心不全患者では、運動耐容能は心機能だけでなく、骨格筋の筋力や筋肉量と強く相関することが知られており、骨格筋の筋力や筋肉量の低下(サルコペニア)も心不全患者の自覚症状に大きく影響を与えている。サルコペニアは心不全加療時の安静よる身体デコンデショニングが増悪因子となり、代謝異常まで伴った場合には悪液質(カヘキシア)と呼ばれる病態にまで至る。慢性心不全患者のおよそ20%にサルコペニア、10%程度にカヘキシアが占めるとされる。高齢化が著しいわが国では、サルコペニア・カヘキシアを併存する慢性心不全患者群は重要な病態群である。 慢性心不全患者への利尿薬、心保護薬等の薬物治療のみの介入では、3-6か月間での心不全での再入院が10-50%と繰り返すなどまだまだ治療が不十分にしかできていない現状があるが、前述したサルコペニア・カヘキシア状態に焦点をあてた、心臓リハビリテーションという運動耐用能と心肺機能の改善を両立する包括的なアプローチも心不全のイベント抑制を期待できる有効な治療と考えられている。分枝鎖アミノ酸(以下BCAA)製剤は、非代償性肝硬変患者の血中アミノ酸インバランスを是正し低アルブミン血症を改善する目的で市販されている。同薬剤は骨格筋の形成に果たす役割は大きい。慢性心不全によるカヘキシアで消化能力の低下した患者も効率よく体内に吸収されることが期待される。BCAA製剤の心不全改善効果に骨格筋のミトコンドリア機能改善が関わっているという報告もあり、BCAA製剤によって心不全治療の中での心臓リハビリテーションにおいて心肺骨格筋機能の改善が予想される。今回、心臓リハビリテーション施行時にBCAA製剤を併用することで、慢性心不全のclinical courseおよび心肺骨格筋および代謝動態の改善に相乗効果が得られるのではないかと仮説を立て本研究の実施を計画した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「慢性心不全患者への心臓リハビリテーションに併用する分枝鎖アミノ酸(BCAA)製剤の有効性・安全性を探索する研究」として、東大附属病院臨床試験審査委員会にIRB整理番号P2015019-11Xとして、本若手研究の課題内容について自主臨床試験として申請し、2015年10月2日に承認された。 並行群間ランダム化比較試験ではあるが、初回登録時と追跡期間の二度最小化法に依るランダム割付を行う画期的なデザインを構築した。 また、試験開始に先立ちUMIN000019601として2015/11/2にUMIN臨床試験登録システムに登録した。 臨床研究保険への加入、試験薬の購入を行った。また、実施体制の構築とともに、試験データの信頼性を高めるために、本研究では専用のEDCを構築中である。概ね、臨床研究構築期間としては半年程度の時間を要するのが通常であり、当該研究では第一被験者登録間近となっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、EDCシステムのシステムバリデーション中である。システムバリデーション後、速やかに被験者登録を行っていく予定。12カ月で48例の被験者をリクルート予定であり。各被験者は半年の試験薬投与期間と、後観察期間3カ月の経験する予定であり、現在、東大附属病院循環器内科通院中の患者と心臓リハビリテーション通院中の患者をリスト化して、適格基準に合いそうな患者を抽出する作業を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は臨床研究を実施する上で、試験デザインと実施体制の構築に時間を費やした。主に、臨床研究保険への加入と、使用するEDCのライセンス費用に充てた。 そのため、当該臨床研究の開始に多少の遅れが生じている。試験薬の購入については、消費期限があるため、小分けにして購入することが必要であるため、予想していた物品費に及ばなかった。 また、EDC構築のためにPCを購入したが、PC購入時期が次年度に繰り越しとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、随時被験者のリクルートが進めば、試験薬の追加購入が必要となる。
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