研究課題
臓器を構成する細胞は均一な細胞集団ではなく、外部からのストレスを受ける際には、空間的・時間的に高度に組織化された応答を呈すると考えられるが、それを高い解像度で解析する手段がこれまで存在しなかった。本研究は、心臓に対する圧負荷応答およびその破綻によって生ずる心不全の過程において、心臓を構成する心筋細胞の間に時間的・空間的にどのような不均一性が生まれるかを明らかにし、それが疾患発症にどのように寄与するかを解明することを目指したものである。我々は圧負荷心不全マウスの心臓から心筋細胞を単離し、細胞レベルでトランスクリプトーム解析を行うことによって細胞応答の不均一性を評価し、空間情報を1分子レベルRNA in situ hybridizationを行うことによって再構築することを可能にした。また単一細胞レベルのトランスクリプトームから、細胞の時間的な不均一性(ダイナミクス)を再構築することが可能となり、これらの結果をもとに、心筋細胞の時間的・空間的に制御されたダイナミックな分子レベルの挙動を明らかにした。そしてこの解析において、心不全に特徴的な分子状態を明らかにし、これを移行する際に特異的に活性化するシグナルを同定したため、心筋細胞特異的にその因子のノックアウトマウスを作成して解析したところ、圧負荷をかけても心不全への移行が見られなくなった。これらの一連の研究は、臓器を構成する細胞集団の不均一性を解明する手段を新たに構築するのみならず、その解析法の病態解明における有用性を実証している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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