研究課題
近年、マクロファージを介した炎症プロセスの慢性的な活性化は、心不全・動脈硬化・不整脈など多くの心血管疾患に共通する病態基盤であることが示されてきた。また心血管疾患の病変組織は、炎症が惹起されているのみならず、低酸素状態にあることが知られている。このような心血管病変に集積し誘導されるマクロファージの低酸素応答は、炎症プロセスの活性化・遷延に重要な役割を果たしていると考えられる。細胞の低酸素応答について、これまで我々は低酸素誘導型転写因子HIF-αを介したマクロファージの活性制御メカニズムを研究してきたが、今年度は特にHIF-αを介した細胞内代謝制御(グルコース代謝)がマクロファージの遊走能について重要な役割を果たしていることを新たに報告した。上記のようにマクロファージは低酸素状態にある心血管病変部位へ向かって遊走・集積し病態の進展に関与していくため、本研究は一連のマクロファージの挙動における初動メカニズムのひとつを明らかにしたものと考えられる。また、HIF-αは低酸素刺激のみならずLPS投与などの炎症性刺激によっても誘導されることが知られている。我々はHIF-αを欠失したマクロファージについて、RNAシークエンスおよびリアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析を進めている。今年度は、炎症性刺激由来のHIF-αでは誘導されず、低酸素由来のHIF-αによってのみ誘導される細胞内代謝酵素を見出しており、現在さらにその遺伝子発現制御機構と生物学的意義について解析を進めている。
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Nature Communications
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10.1038/ncomms11635