研究課題/領域番号 |
15K19373
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
八木原 伸江 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (70750347)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不整脈症候群 / 非翻訳領域 / 遺伝子異常 |
研究実績の概要 |
現在までに解明されている致死性不整脈症候群の原因の多くは、心筋に発現しているイオンチャネルやその関連蛋白のアミノ酸置換を伴う遺伝子変異であり、ほとんどは蛋白の翻訳領域に存在している。しかし、蛋白翻訳領域はゲノム全体の1%程度を占めるに過ぎず、また、近年、転写はされるが蛋白に翻訳はされない非コードRNAにも蛋白の翻訳を調節する働きがあることが明らかにされてきた。 不整脈症候群において、非翻訳領域の変異が疾患の原因であるとの報告は現在までない。我々は既に、洞不全症候群、心臓伝導障害、Brugada症候群、心房細動、早期再分極症候群、特発性心室細動等種々の不整脈症候群において、心筋に豊富に発現しているナトリウムチャネルの遺伝子であるSCN5Aプロモーター領域、転写因子結合部位のシークエンシングを行い、いくつかのrare variantを同定している。これらは不整脈のないコントロール群では同定されておらず、また、rare variantの頻度はコントロール群に比べ不整脈症例で有意に高かった。また、これらのrare variantのうちのいくつかについて、レポーターアッセイを用いてプロモーター活性をwild typeと比較したが、いずれのvariantにおいてもその活性は低下しており、ナトリウムチャネルの発現を減少させることが考えられた。非翻訳領域の変異が不整脈発症に重要な役割を果たすと考えられ、現在は次世代シークエンスの手法を用いた広範囲のイオンチャネルの非翻訳領域のシークエンシングを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全ゲノムあるいは全エクソンを対象とした次世代シークエンスでは、疾患の原因である遺伝子変異の他に、疾患とは無関係の多数の変異が同定される。このことから、我々は心筋に発現するイオンチャネルやその機能修飾蛋白、それらの転写因子や転写調節因子に焦点を当てた独自の次世代シークエンスのアッセイを構築し、遺伝子検索を行ってきた。ここに、さらに種々の不整脈の原因遺伝子であるナトリウムチャネルやカリウムチャネルの非翻訳領域を含めた新たなアッセイを構築し、集積した140例ほどの不整脈症候群や不整脈を伴う重症心筋症の症例のサンプル調整が終了している。
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今後の研究の推進方策 |
現在実験を行っている次世代シークエンスの手法を用いたナトリウムチャネル、カリウムチャネルの非翻訳領域のvariantについて解析を進める。特に、プロモーター領域に重点を置いてrare variantの同定を進める。同定されたrare variantについて、以前施行したようにルシフェラーゼレポーターアッセイを行い機能解析を行う。多くの不整脈においては、イオンチャネルの機能低下が原因であり、非翻訳領域の変異を原因とする不整脈症例においても、その変異は機能低下に伴う蛋白の発現量減少を惹起するものと推察される。 また、ChIP-Seqの手法を用いて、心筋でのイオンチャネルやその機能修飾蛋白の遺伝子の転写因子結合部位やヒストン修飾の部位を解析し、転写調節にかかわる部位を同定する。同定された領域を加えた新たな次世代シークエンスのアッセイを構築し、さらに症例の蓄積を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に購入していた実験用試薬を用いて次世代シークエンスの実験を行ったため、当初予定していた試薬購入費を当該年度に使用する必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
140例あまりの不整脈症候群のシークエンシングが終了しており、結果の解析を早期に行う。得られた結果より、病原性を持つと推定される変異において機能解析を行う。本年度早期に機能解析に必要な試薬や実験機器を購入する予定である。また、ChIP-Seqに必要な試薬を購入する。
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