研究課題
細胞外ドメインシェディング活性化因子、ナルディライジン(NRDc)は、核内で転写制御因子としても働く「多機能プロテアーゼ」である。NRDc欠損マウスは、洞房結節におけるHCN4の発現低下によるIf電流低下に伴う徐脈と、代償性交感神経活動亢進の表現型を呈すが、心不全を来さない。本研究では「NRDcが核内において、転写因子と複合体を形成し、HCN4の発現を制御する」という仮説のもと、生理的状態と心不全における洞房結節自動能制御の役割解明を目的とした。クロマチン免疫沈降シークエンス法(ChIP-seq)やChIPシークエンス法などを用いて、NRDcが洞房結節自動能に必須のイオンチャネルの上流で、どのような転写因子とともに、いかにして転写制御に関わるのかを検討した。野生型成体マウス心臓における抗NRDc抗体を用いたChIP-seqでは、HCN4の上流にNRDcのリクルートは認められなかったが、サンプル自体が洞房結節細胞ではなく全心臓であったことや成体の心臓であったことが原因と考えられた。一方若年齢マウス心臓におけるChIP法では、NRDcがHCN4やHCN1のプロモーター領域に結合することが明らかとなった。HCNの上流でその転写制御を行う他の転写因子との複合体形成についても複数検討をおこなった。なかでも、既にHCN4の上流に存在されると報告されているNRSFや他の転写因子について、NRDcとの複合体形成を検討するため、免疫沈降法を行った。さらに、in vitroの系においても、NRDcがHCN1やHCN4の上流に存在することを明らかにした。NRDcがHCN4の転写制御に際して、自身の酵素活性が必要かどうかについても、細胞に酵素欠失型変異NRDcベクターの過剰発現を行い、野生型NRDcと比較しHCNの発現量に差がでるかどうかを検討し、酵素活性が転写制御に必要である可能性を見出した。
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Diabetes
巻: 65 ページ: 3015-27
10.2337/db16-0178