研究課題
心臓は常に自律拍動をするために莫大なエネルギーを消費している。心筋が虚血状態になると、エネルギーの供給と需要のバランスが崩れ心不全に陥る。しかし虚血時におけるエネルギーすなわちATPの供給制御メカニズムについては未だ解明されていない。 本研究では虚血におけるATP産生制御機構を解明するために、最近明らかにしたATP 合成酵素制御因子G0S2 の相互作用様式および量的制御機構について生化学的解析を行う。また虚血においてそのような制御機構が心筋細胞のATP 産生とエネルギー代謝にどのように関わっているかを明らかにする。平成28年度では、G0S2の量的制御メカニズムの解明のため、G0S2が分解されない変異体の探索を行った。ユビキチン非結合KR変異体では、G0S2タンパク質の量的変化やユビキチン化が野生型と同様であったため、G0S2を3つの領域に分けた欠失変異体で検討したところ、疎水性領域が分解に寄与している可能性が示唆された。さらにアラニン置換変異体での検討からGlu44が分解に大きく寄与するアミノ酸であることが示唆された。現在、心筋細胞でのATP動態に及ぼす影響を検討中である。またATP感受性FRETプローブMit-ATeamを発現するゼブラフィッシュにGlu44Ala変異体G0s2遺伝子を導入し、個体での虚血におけるATP動態と心機能に及ぼす影響も検討している。国立精神・神経医療研究センターとの共同研究によりヒトミトコンドリア病患者由来の血液サンプルを用いてG0S2の遺伝子変異の探索を進めているが未だ疾患遺伝子変異は同定できていない。さらにミトコンドリア病患者細胞におけるG0S2野生型やGlu44Ala変異体の発現系を構築中であり、患者細胞におけるミトコンドリア病病態に、G0S2分解抑制変異体が及ぼす影響を検討予定である。
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Human Molecular Genetics
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http://medbio.sakura.ne.jp/