研究実績の概要 |
【研究の目的】我々は,下肢陽圧負荷心エコー図法を用いて心拍出量を増大させることによりprojected AVAおよび体表面で補正したprojected AVAiを求め,低圧較差高度大動脈弁狭窄における臨床的有用性について検討した. 【方法】手術適応がないと判断された無症候性低圧較差高度大動脈弁狭窄(AVA <1.0cm2 あるいはAVAi <0.6 cm2,mean gradient <40 mmHg)74例において,下肢陽圧負荷心エコー図法によるprojected AVAiの算出を行った.正常流量低圧較差群46例(NF-LG: SVi≧35 mL/m2,)と低流量低圧較差群28例(LF-LG:SVi<35 mL/m2)に分類し,将来の心イベントとの関連を検討した.Global longitudinal strainをEchoinsightにより計測した. 【結果】 NF-LG群に比べて,LF-LG群は下肢陽圧負荷中のglobal longitudinal strainが小さく,projected AVAiは大きい傾向があった.全例における多変量解析により,projected AVAiはイベント発生の予測因子であった.ROC解析から求めたprojected AVAiのカットオフ値0.72 cm/m2を用いて2群に分類すると,LF-LGとNF-LGのいずれにおいても,projected AVAiが小さい群に心イベントが多く発生した. 【結論】下肢陽圧負荷心エコー図法で得られるprojected AVAiは,心拍出量とは独立して,無症候性低圧較差高度大動脈弁狭窄のリスク層別化に有用である. 【意義】高齢化社会に伴い大動脈弁狭窄症の症例数は年々増加傾向にある.我々はこの病態に対する新たなリスク評価方法を立案,証明することに成功した.
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