研究課題
心筋梗塞や高血圧など多くの循環器疾患は薬物やデバイスを用いた治療法が開発されてきているが、病態の最終像である心不全は治療による予後の改善も乏しいばかりか年々増加傾向にある。また、自律神経の過剰負荷は、心不全増悪の主因である。近年、頚動脈小体における末梢化学受容器反射亢進が、高血圧や心不全患者において、交感神経活性化の主要な原因であることが報告されていることから、当該研究では、頚動脈小体化学受容器除神経による心不全に対する新規自律神経減負荷治療の開発に向けた基盤研究を行った。治療効果を検証する前段階として、頚動脈小体化学受容器反射による交感神経調節系への定量的な影響を比較検討する基礎実験を行い、頚動脈小体化学受容器反射によって交感神経活動が著明に上昇すること、また動脈圧受容器反射のリセッティング現象を伴うことを証明した。治療効果検証実験としては、高血圧性心不全モデルラットにおいては、頚動脈小体化学受容器除神経により、有意な交感神経活動低下を認め、それにより圧利尿曲線の左方シフトを伴った血圧低下と著明な長期予後の改善(relative risk reduction: 65%)を認めた(American Journal of Hypertension誌)。また、心筋梗塞後心不全モデルラットにおいても、有意な交感神経活動低下を認め、長期の心臓リモデリング抑制と心不全指標の改善効果を示した。心筋梗塞後心不全モデルにおいては、抗炎症効果をも有することを証明した(日本循環器学会総会、米国自律神経学会にて報告)。以上の結果から、頚動脈小体化学受容器除神経は、高血圧や心不全などの交感神経活性化が病態生理に大きく関わる循環器疾患において、有効な新規自律神経減負荷治療になりうると結論づけた。一方で、臨床への応用は慎重かつさらなる検討が必要であることが示唆された。
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