研究課題
【最終年度に実施した研究の成果】平成27年度に実施した研究によりピオグリタゾンを封入したPLGA(ポリ乳酸グリコール酸共重合体)ナノ粒子によるプラーク破綻抑制効果が示唆されたため、平成28年度はナノ粒子の標的細胞である単球・マクロファージ機能にピオグリタゾンナノ粒子が及ぼす作用について検証した。その結果、ピオグリタゾンナノ粒子は末梢血において炎症性単球と考えられているLy-6Cを高発現した単球数を減少させた(フローサイトメトリー)。また、細胞レベルでは単球に発現するIL-1β等の炎症性サイトカイン発現や細胞外マトリックス分解酵素MMP(matrix metalloproteinase)の活性を抑制する一方、arginase-1等の抗炎症性マクロファージ関連分子の発現を増加させた。【期間全体を通じて実施した研究の成果】本研究により生体吸収性ポリマーPLGAを用いたナノ粒子は単球・マクロファージ指向性薬物送達システムとして有用であることが示された。本システムとPPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor-γ)アゴニストを組み合わせることによりPPARγアゴニストの有する抗炎症単球・マクロファージへの分化促進作用を効果的に発揮し動脈硬化の病態における終末像のひとつ、プラーク破綻を抑制しうる可能性が示された。【意義・重要性】急性心筋梗塞を代表とするプラーク破綻に起因する血栓性合併症はその頻度が多いだけでなく生命予後、quality of life (QOL)に与える影響も大きい。しかし、プラーク破綻に対する予防効果が認められている現行治療はスタチンのみであり、その効果も十分である。本研究をもとに新規ナノ治療、抗炎症治療が実用化されれば動脈硬化性疾患治療におけるブレークスルーとなることが期待される。
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