研究実績の概要 |
平成27年度は当初の計画通り、自由運動下の動脈圧受容器反射欠損動物で容量不耐性による左心房圧変動と心不全発症の証明と、圧反射系の生理モデルとコンピューターシミュレーションを用いて動脈圧受容器反射機能を層別化する方法を確立した。 動脈圧受容器反射欠損ラット (Sinoaortic denervation; SAD)を用いた実験結果を示す。SADは正常と比較して平均動脈圧は変わらないが動脈圧変動は有意(p=0.001)に拡大していた。これは、正常食塩食および高食塩食でも同様の結果であった。また、SADは平均左房圧は変えないが、左房圧変動は有意(p=0.01)に拡大し、これは 正常食塩食および高食塩食でも同様の結果が得られた。さらに、SADは高左房圧状態を著明に延長させており、高食塩食においては左房圧が18mmHg以上となる時間は正常の20倍にも達した(Sakamoto et al, Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2016)。 この結果は自由運動下の動脈圧受容器反射欠損動物では心収縮能が保たれていても容量不耐性による左心房圧変動と心不全発症を証明できたことを意味する。 また、ラットを用いて、安静時における動脈圧データをテレメトリーシステムにて取得し、得られた動脈圧データを1点/秒としてヒストグラムを作成した。次に、数理モデルを用いて、動脈圧ヒストグラムデータのパラメタを動脈圧受容器反射機能の指標とし、申請者がこれまでに行ってきた動脈圧受容器反射機能解析法 (Saku et al, Physiol Rep, 2014) と比較し、本研究で得られた数値的層別法の妥当性も検証した。
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