研究課題
平成27年度の動物実験による提唱概念の正当性証明とコンピューターシミュレーションによる病態モデルの層別化に引き続き、平成28年度はまずはヒトでの血圧データ取集・解析に着手した。その過程で、測定血圧データの妥当性検証や解析モデル最適化を行った。まず、臨床研究においては、協力施設にて健常人および高齢者における連続血圧波形の取得(N=55)を行なった。ヒストグラムや周波数軸での検討を行なうためには、安静仰臥位で30分以上の連続測定を行なうことで安定かつ再現性よい血圧変動の評価が可能であることが判明した。また、30分間の測定であっても高齢者になるほど、血圧のバラつきは大きくなり、ヒストグラム幅の増加や周波数軸上の0.01Hz周囲パワーの上昇として検出されることが明らかとなった。さらに、平成27年度に構築した解析モデルでは高齢者の動脈圧受容器反射機能は低下していることが判明した。平成28年度で健常人や高齢者での臨床研究プロトコールを確立できた。さらに、シミュレーション精度向上のために解析モデル最適化を行った。正常心のみならず心不全の病態モデルを用いて圧受容器反射と容量不耐性について追加実験を行った。動脈圧受容器反射欠損状態とした高血圧性心臓病モデルラットにおいては、正常心よりも大きな左房圧変動を示し、長時間の左房圧上昇から肺水腫となることが明らかとなった。ラット心不全モデルから得られたデータを心不全患者の解析モデルのプロトタイプへ組み込むことでシミュレーション精度が向上した。最終的な目標である、HFpEF患者における動脈圧受容器反射機能と心不全再入院率の関係については検証できていないが、解析モデルの確立によりヒトでの動脈圧受容器反射機能障害の定量的評価が可能となったという点においては、一定の研究成果が得られたと考える。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
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