初年度に作成した出生時低体重マウスを用いて新生仔期の心臓表現型を比較した。心臓重量と体重は、出生直後から新生仔期にかけては低体重群で有意に低下していたが、生育後は重量差が消失していた。本所見はICRマウスで確認されたが、B6系統マウスの場合は体重差が生育後も遷延しており、プロトコルや系統により成長の過程に差が生じることが明らかとなった。続いて、細胞レベルでの差を評価するために、採取した心臓を単細胞に分離後、磁気吸着ビーズを用いて心筋細胞と非心筋細胞に分離して細胞数を計測した。生後3日の時点で、心筋細胞数に有意な差は認められなかったが、非心筋細胞に関しては低体重モデルマウス群で減少している傾向を認めた。また、免疫組織染色後に心筋断面積を比較した結果、低体重モデルマウスで有意に断面積が拡大していることが明らかとなった。以上の結果から、妊娠飢餓ストレスが加わることにより、心臓内での心筋とそれ以外の細胞の構成率に変化が生じることが明らかとなった。特に、非心筋細胞が低体重群で減少している傾向にあるため、環境負荷に対して心筋細胞数を一定に保つ何らかの代償機構が関与している可能性が示唆された。本研究により、マウスモデルを用いて出生児低体重に伴う成人後循環器リスク上昇のメカニズムを明らかにするための、基本となる実験系を創出することができた。今後は本実験系を用いて、原因因子を明らかにするとともに、循環器疾患との関連を明らかにする予定である。
|