研究課題/領域番号 |
15K19393
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
下角 あい子 和歌山県立医科大学, 医学部, 研究員 (60508000)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光干渉断層法 / 治癒血栓 / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
平成27年度は剖検心における冠動脈の光干渉断層計(OCT)および組織像での層構造の解析を施行した。これまでに50%以上の狭窄を有する154ペアのOCT画像-組織標本を得ている。層構造を評価するために、組織標本はHE染色だけでなく、シリウスレッド染色を行い、偏光顕微鏡下で観察を行った。その結果、OCTにおける内膜の層構造が、組織標本における層構造と高い精度で一致していることを確認することができた。これにより、冠動脈の動脈硬化による内腔狭窄は、マクロファージや脂質の沈着によって始まるとされる典型的な動脈硬化だけでなく、冠動脈内膜がなんらかの要因により層構造を有することで、内腔狭窄が進行する例もあるということが証明された。ここまでの成果をすでに論文執筆に取り組んでおり、近日投稿予定である。また、第80回日本循環器学会学術集会にて本研究成果の発表を行った。 しかしながら、内膜の層構造の本質についてはまだ明らかにできていないため、これからさらなる研究が必要である。研究者は、この層構造がプラーク破裂やびらんによって引き起こされた無症候性血栓の治癒構造物であると考えており、血栓由来の層構造であることを証明できれば、動脈硬化の血栓原説と関わる重大な証拠となり、また、生体内ですでに臨床応用されているOCTを用いて血栓層構造を観察するができるようになることで、経時的観察が可能となる。それにより、治癒血栓がそのどうに内腔狭窄に寄与し、虚血性心疾患に関わるかを明らかにすることができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験を行い、血栓の治癒過程についてのOCT所見を収集する予定であるが、動物実験の準備に時間を要しているため。しかしながら、剖検症例における実験は順調であり、全くの遅延ではないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
剖検例における本研究成果を発表することで、臨床に普及しているOCT検査に新たな知見が加えられることとなるため、早期に発表することが望ましいと考えている。そのためには、論文執筆、投稿が欠かせないため、それらを優先的に行い、その上で、層構造の成分解析を行っていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた動物実験が次年度に持ち越しになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通り実験を遂行する予定である。
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