急性心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患は生命を脅かす疾患であり、急性発症も多く再発リスクも高いため、発症予測が重要である。発症予測に対してはさまざまな検討がなされてきたが、いまだに確立していない。その理由の一つに、急性心筋梗塞の発症様式には、脂質性プラークの破綻による血栓症以外にも、無症候性血栓症や内膜びらんに伴う血栓症など、様々な発症様式があることが挙げられる。また、安定狭心症においても、脂質性プラークの増大だけではなく、無症候性血栓症やびらんに伴う血栓症が内腔狭窄に関わっていると考えられる。我々は、無症候性血栓症に引き続きおこる治癒血栓に焦点を当て、本研究を遂行した。血栓は治癒すると線維性プラークとの区別が困難となるため、まずは、剖検試料を用いた冠動脈プラークにおける治癒血栓の同定や、光干渉断層像(OCT)における治癒血栓像の同定を行った。無症候性血栓症では血管内腔側に血栓が付着し、治癒血栓は層構造をなすと考えられる。剖検の冠動脈における層構造をシリウスレッド染色で同定したところ、50%以上の狭窄病変114病変に対して32病変 (28%)で層構造を認めた。また、治癒血栓をOCTで同定し、組織と比較した結果、OCTは治癒血栓に対して高い検出力を有していた(感度:81%、特異度:98%、陽性的中率:93%、陰性的中率:93%)。OCTで治癒血栓を検出することが可能であれば、今後は臨床的、経時的に評価することができるようになる。治癒血栓の臨床的意義を検討することで、虚血性心疾患の再発予測、インターベンションの際の治療決定等に役立てることができると考える。
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