研究課題
本研究では、non coding RNAでもまだ機能が十分に解明されていないlinc RNAに着目した。かつては意味のない配列と考えられていたnon coding RNAであるが、今までは転写制御に関する重要な機能を持つことがわかってきている。また、クロマチン修飾によってエピジェネティックな転写制御を心臓発生、心筋分化過程で解明することを目標とした。心臓発生と心筋分化誘導下において必要なlinc RNAを同定するためにマウス胎児、出生後、成獣からRNAを抽出した。また、ES細胞から心筋分化誘導し作成した心筋細胞と未分化状態のES細胞からRNAを抽出した。これらの、サンプルをnon coding RNA arrayを行い、発生段階に発現量の変化を認めた心臓発生に必要と考えられるlinc RNAを特定することができた。未分化ES細胞での発現量を低下させ、心筋分化へ影響するかを調べた。siRNAを用いてlinc RNAのノックダウンを行い、qRT-PCRでその発現量が低下することを確認した。siRNAノックダウンES細胞では、コントロールと比較して心筋分化の効率低下を認めた。同定したlinc RNAのうち発現量の高いもの、そして心筋分化系にかかわりの高い遺伝子座の近傍に位置すると考えられたlincRNAに対してsiRNAを作成し、その発現量を低下させES細胞の心筋分化における影響を調べた。そのsiRNA-ES細胞を心筋に分化誘導し心筋トロポニン陽性細胞数のカウント、hanging drop を用いた拍動胚様体数のカウント、心臓関連遺伝子発現比較を行ったところ、通常ES細胞よりも拍動胚様体数の低下を認めた。以上よりlincRNAがES細胞の心筋分化系において、重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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