研究課題/領域番号 |
15K19397
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田井 育江 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(RPD) (90749508)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テトラスパニン / 血管新生 / 網膜血管 |
研究実績の概要 |
血管内皮に発現するTspan18に着目し、ノックアウト(KO)マウスの表現型解析を進めている。網膜におけるTspan18は動静脈および神経節細胞に発現し、Tspan18 KOマウスは、成長した個体については生殖可能であるが、Tspan18(-/-)マウスの出生率が低下していた。KOマウスの網膜血管網形成には中程度の遅延が認められ、生後6日目においては網膜血管のradial growthに、生後9日目においてはvertical sproutingに遅延が認められた。しかし生後21日においては表現型がコントロールマウスと一致し、血管形成の遅延は一過性のものであると考えられた。 上記の表現型が生じる生化学的過程について手がかりを得るため、HUVECを用いてin vitroでTspan18のノックダウンを行った。膜タンパク質の集合、特に、血管内皮の分化に重要なNotchシグナルを制御する膜タンパク質の分解機構に着目し、Notch下流遺伝子等について発現を解析したが、顕著な差は認められなかった。また、同様のノックダウンをHUAECに対して行い、 in vitroにおけるtube formationを評価したが、これについてもノックダウンによる異常は検出されなかった。ただし、上記の結果については高いノックダウン効率を得られなかったために差が検出されなかった可能性が残っている。以上に加えて、Tspan18の相互作用タンパク質の共免疫沈降法による探索に向け、現在までにTspan18のタグ付き強制発現コンストラクトを作製している。 最後に、Tie2-creを用いた血管内皮特異的なTspan18のKOマウスを作製した。現在、このコンディショナルKOマウスについて、全身のKOマウスと表現型の共通性を評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tspan18KOマウスの網膜における表現型はシビアではないものの、血管新生の遅延が明確に起こっており、その機能が血管網の生理的な発生過程に関与していることが明らかとなった。従って、この分子機構の解明が次の課題となる。Tspan18を含むテトラスパニンファミリーは、膜タンパク質同士の会合を促進する細胞膜上のマイクロドメインを形成するタンパク質群として一般には理解されているが、相互作用タンパク質は各々のテトラスパニンについて多様である。Tspan18については具体的な相互作用タンパク質の報告がなく、Tspan18の強制発現コンストラクトを利用することで新規相互作用タンパク質を同定し、機能に迫ることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Tspan18は生後6日目の網膜において、神経節細胞および血管内皮細胞に特異的に発現が認められたことから、今後は両細胞におけるTspan18の血管新生への機能を解析する。具体的には、神経特異的Tspan18 cKOマウスをChx10-creを用いて作成し、血管内皮特異的なTie2-cre-Tspan18 KOと合わせて網膜血管を解析し、血管内皮と神経節細胞のそれぞれに発現するTspan18の網膜における表現型への寄与を明らかにする。 また、Tspan18の血管新生への寄与について、そのメカニズムに迫るため、FLAG-Tspan18をHUVECまたは293細胞に強制発現し、共免疫沈降および質量分析により結合タンパク質の候補を得る。
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