研究実績の概要 |
本年度において、1)肥満モデル動物における慢性的なミトコンドリア脱共役剤投与が心臓および全身へ与える影響を明らかにする事、2)生理的な老化にミトコンドリア脱共役剤が与える影響を検討する事を目的として研究を実施した。肥満モデルとして、高脂肪食投与モデルを用いた。 脱共役薬2,4-dinitrophenol(DNP)の自由飲水形式による経口投与下(6~16mg/kg/day DNP)で、高容量と低容量、プラセボ、の3群で高脂肪食分と通常食ラットで検討した。DNP投与ラットは高脂肪食を摂取していても体重増加不良と肝重量の増加抑制が認められ、体温は上昇していた。血行動態に変化はなく、心エコーのパラメーターでは、左室拡張末期径、Fractional Shortening、壁厚に各群に有意差をみとめなかった。逆に、少量のDNP投与では食事摂取量が増加していた。 種差が関係している可能性を考え、マウスでも実験を実施した。マウスでは、 3.4 mg/kg/dayのDNP投与により体重増加不良、肝重量の増加抑制が認められたが。体温の変化は認めなかった。一方、体重あたりの心重量は高脂肪食のみの群よりも有意に重かった。マウスでは、食事摂取量の差はなく、レプチンにも差は認めなかった。High fat diet群において、LowDNPを投与すると、ASTは有意に上昇した。腎機能や脂質関連項目、血糖値に差は無かった。 まとめとして、脱共役薬投与により、やせが起こるのは高濃度を投与したときであり、低濃度ではレプチンを介さない食欲増進により体重増加や肝機能上昇が示唆された。心重量が変化する機序、食欲増進の機序について検討中である。
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