最終年度の目標であった、新規病理診断基準の診断妥当性検証については十分な統計学的検証に足りうる症例数に届かず、現在継続して症例を登録中である。今後も症例登録を継続し、当初の計画通り将来のイベントリスク層別解析に応用できるよう予後追跡を行う予定である。今回の研究期間全体を通じて、得られた結果は以下の通りである。心臓サルコイドーシス(心サ症)連続95例と心サ症以外の非虚血性心筋症連続50例(対照群)を比較検討した。心サ症例を肉芽腫陽性(N=26)、肉芽腫陰性かつ厚労省診断基準2007年度改訂版による確定診断(N=65)、肉芽腫陰性かつHeart Rhythm Society 2014年度診断基準による確定診断(N=26)の3群に分類し、各群の非肉芽腫組織切片における免疫担当細胞の浸潤を対照群と比較検討し、これら病理組織学的特徴による心サ症の診断精度を検討した。結果、心サ症の非肉芽腫心筋組織切片に浸潤するCD209陽性樹状細胞数(P<0.05)およびCD68陽性マクロファージ数(P<0.01)は対照群と比較して有意に高値である一方、CD163陽性M2マクロファージ数は低値であった(P<0.01)。ROC解析で得られたCut-off値における、非肉芽腫切片のCD209陽性樹状細胞数高値かつCD163陽性M2マクロファージ/ CD68陽性マクロファージ比低値の各診断基準による診断感度は46.2~65.4%、特異度は100%:95%CI 92.9-100%であった。結論として非肉芽腫心筋組織切片への樹状細胞浸潤増加かつM2マクロファージ比の減少は、心サ症の診断において従来の報告より高い感度と極めて高い特異度を示し、樹状細胞とマクロファージフェノタイプは心サ症の診断における新たな病理組織学的マーカーになりうると考えられた(J Am Heart Assoc 2016;5:e004019)。
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